早めの受診が大事

この病気で重要なのは他の病気との識別。慶応義塾大学の鈴木秀和准教授は「まずは医療機関を受診し、胃がんや胃潰瘍などがあるか内視鏡で調べることが大事だ」と話す。胃腸の不調には重篤な病気が隠れていることがあるためだ。また、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染がないかも検査する。

医師が内視鏡でみても機能性胃腸症と見分けが付けにくい病気もある。その代表例が逆流性食道炎。胃酸が逆流し、食道が炎症を起こす病気で、胸焼けや吐き気を伴う。このほか、膵臓(すいぞう)の機能が低下して症状が出ていることもまれにある。

ただ、胃痛がひどく自分で「胃がんかもしれない」と思い込んで悲観していた人が、医療機関を受診し、がんではないと診断されたとたんに、症状が消えた例もあったという。いずれにせよ一人で悩まずに、早めに消化器内科などを受診しよう。

機能性胃腸症と診断された場合は、投薬や食事の改善などで病気の回復を目指す。症状に合わせて選択する薬は異なり、胃酸が多く出ていれば過剰な分泌を抑える薬を服用する。胃の動きが鈍っていれば、動きを活発にさせる薬を飲むのが一般的。人によっては漢方薬が有効な例もある。また、心理的な要因が強い患者には、抗うつ薬などを処方したりする。

■食習慣の改善も効果的

投薬だけでなく、食習慣を改善したり、食べ物の種類を変えたりするのも効果的だ。例えば、早食いが習慣になっているケース。食べ物を十分にかまずにのみ込んでしまうと、胃に入っても1日ほど消化されずに残ることがある。ゆっくりよくかんでからのみ込めば、2~3時間で胃を通過し、順調に消化・吸収されるようになるという。

また、肉など脂っこいものや甘すぎるもの、塩辛いもの、刺激が強い香辛料など胃に負担がかかる食べ物を控え、酒の飲み過ぎや喫煙もやめよう。

慶大の鈴木准教授は「この病気は国際線の客室乗務員やタクシー運転手など、勤務時間が不規則になりがちな職種でよくみられる」と指摘する。生活が乱れると、自律神経のバランスが崩れ、胃にも負担がかかって動きが鈍ってしまう。なるべく決まった時間に食事を取るとともに、睡眠も十分確保するなど規則正しい生活を送ることが大切だ。自分なりのストレス解消法も見つけたい。

薬物治療や生活改善に取り組めば「大半の患者は症状がよくなる」と専門家は口をそろえる。胃の調子が悪ければ、せっかくのおいしい食事も満足感が得られない。おかしいと思ったら早めに受診するとともに、今の生活を見直すきっかけにしてほしい。

(草塩拓郎)

[日本経済新聞夕刊2012年4月6日付]

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