広がる無料ネット通話、スマホやSNSで気軽に
「スカイプ」以外も続々登場
新年度がスタートした。就職や転勤、進学などで新たな土地での生活が始まった人も多そうだ。離れた友人や家族の元気な姿を見たい。そう思ったときに力になってくれるのが、インターネット回線を使った通話サービスだ。最近はパソコンソフトを通じた音声通話だけでなく、普及が進むウェブカメラやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を活用したサービスも充実。私生活だけでなくビジネスでも距離の壁を乗り越える味方になっている。
専用ソフト不要のサービスも
「ブラウザーさえあれば、郷里・宮崎の友達とネット上で気軽に顔を見ながら話せる」。福岡市でウェブ制作会社を営む日高秀彦さん(29)が昨年から使っているのが無料の動画通話サービス「GlueCast(グルーキャスト)」だ。ソフトのインストールは要らず、必要なのはネット環境とヘッドセット程度。話す場所にあたる「チャットルーム」をウェブサイト上で開設し、ブラウザーでそのURLにアクセスするだけで、複数の人で会話できる。交流サイト(SNS)「フェイスブック」のアカウントさえあればログインでき、新たな会員登録はいらない。
仕事でも東京や名古屋など遠方の取引先との連絡に活用している。ノートパソコンにウェブカメラが付いているため、家でもオフィスでも場所を選ばない。「顔をみてリアルタイムでやり取りできるので、相手にも安心してもらえる」(日高さん)
同サービスを運営するグルー(福岡市)の迫田孝太社長が開発したきっかけも、「孫の姿をみせるため実家の両親でも簡単に使えるサービスがあればと思った」こと。身近な人とつながれる仕組みとして東日本大震災直後に開発を始め、昨年9月に運営し始めた。様々な場所で使えるよう、近くスマホにも対応する予定だ。
遠く離れた海外との間で国内と同じように使えるのもネットを使ったビデオ通話の魅力だ。ロボット開発を手掛けるユカイ工学(東京・新宿)の青木俊介代表は、昨秋まで上海で暮らしていた妻や2人の子どもとインターネット電話「スカイプ」のビデオ通話でコミュニケーションを取っていた。約2年間、別々に暮らしていたが、「毎日のように妻や2人の子どもの元気な姿を見ながら、今日の出来事などを話すことができた」という。
中国の企業と会議も
仕事でも台湾や中国の企業とやり取りすることが多いという青木さん。「現地でもスマホにスカイプのアプリを入れている人が多いので、最近は打ち合わせにもよく使う」そうだ。従来の国際電話では高額になりがちな通話料もかからず、顔も見える。社内でも全員が使っているので、会社に集まらなくても雑談やアイデア交換できるツールとして活用しているという。
青木さんはスカイプのビデオ通話以外に、このほど登録者数が世界で2500万人を超えたNHNジャパンのネット通話サービス「LINE(ライン)」も今年に入って使い始めた。中国の友人とのやりとりでは現地で人気が高い音声チャットアプリ「微信」を使う。「スマホが普及したことでネット通話の利用の頻度が高まった」(青木さん)という。
カメラやマイクが付いたスマホやタブレットなどが一般的になり、公衆無線LANも普及した。動画や音声データの圧縮技術などの進歩も手伝って、ネット通話は通常の電話を使った音声通話の代替以上の存在になりつつある。手元の携帯端末やノートパソコンを使って、選択肢も増えているネット通話で遠く離れた大切な人とのつながりを確認してはどうだろうか。
(政治部 宮坂正太郎)
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