ヘルプ/心がつなぐストーリー
現実に体当たりする女たち
公民権運動が盛り上がりを見せていた1960年代はじめ。人種差別の色濃い米南部ミシシッピ州ジャクソンが舞台のキャスリン・ストケットの大ベストセラー小説をテイト・テイラーが脚色・監督して映画化。
同じジャクソン出身の女性原作者と男性監督の友情から生まれたという映画は、「ヘルプ」と呼ばれ、白人家庭で働く黒人のメイドたちの本音を集めた1冊の本が出版される過程を軽妙な語り口で追っていく。米南部特有の揚げ物中心の料理が満載で美味(おい)しそう!
大学を出て帰郷した町は相変らず黒人を差別し、女は結婚して一人前。失望した作家志望のスキーター(エマ・ストーン)は、友人宅のメイド、エイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)から本音を聞いて本にまとめようと思い立つが彼女は応じない。結果が怖いのだ。
そんなとき、絶品のパイを作るミニー(オクタヴィア・スペンサー)が雇い主の家のトイレを使ってクビになり、収入が絶たれて夫に暴力を振るわれた、と知ったエイビリーンは重い口を開いて語りはじめる。
そこにミニーも加わり、二人の友情の絆は仲間たちの勇気を奮い立たせた。
ヘルプに育てられ、白人・黒人両方の気持ちがわかるスキーターと、そのヘルプの解雇で悔やむ過去がある彼女の母。クビにめげず、仰天の復讐(ふくしゅう)を果たすミニーを新たに雇った美女シーリア(ジェシカ・チャステイン)は、白人奥様連中のいじめられっ子だ。と、重くも暗くもなる話を現実に体当たりする女性の姿を描くことで、笑いの絶えないドラマに仕立てたセンスの良さとしたたかさは抜群。
ミニー役スペンサーがアカデミー賞助演女優賞を受賞。デイヴィス主演、チャステイン助演、とそれぞれ候補にあがり、劇映画2作目の監督の確かな演出力で肌の色に関係なく、女優たち全員が輝いている。
2時間26分。
★★★★
(映画評論家 渡辺 祥子)
[日本経済新聞夕刊2012年3月23日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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