女性にとってCOPDが厄介なのは、男性より発症しやすいことだ。その理由について、石井センター長は「少なくとも3つの原因が考えられる」と話す。まずは体格。一般に女性は男性よりも肺が小さい。肺の体積に比べ、相対的に気管の容積が大きくなるため、気道の病気であるCOPDにもかかりやすくなるという。

ホルモンの影響も考えられる。卵巣などで作られる女性ホルモンのエストロゲンが少なくなると、COPDを発症しやすくなるという指摘もある。さらに気道の性質も関係している。女性の気道は外部からの刺激に対して過敏に反応し、収縮しやすいという。

たばこを同程度吸っている男女を比べると、女性のほうが重症化しやすいことも分かっている。急速に悪化して呼吸困難に陥る「増悪」と呼ばれる現象が起こりやすい。こうなると、一時的に苦しいだけでなく、治まった後も症状悪化につながることが多い。

男女合わせて国内に推定530万人の患者がいるにもかかわらず、実際に治療しているのはそのうち約22万人にすぎないという。だが他の病気と同じくCOPDも早期発見し、適切に治療するのが重要だ。

喫煙者やかつて吸っていた人などに専門家が勧めるのが、肺の機能を調べる「スパイロメトリー検査」などを定期的に受診することだ。コンピューター断層撮影装置(CT)などと組み合わせ、COPDや肺がんなどを早期に見つける「肺ドック」を実施する医療機関も増えている。

散歩など運動重要

治療の基本はまず禁煙。発症後も禁煙は有効だ。薬物療法もある。狭くなった気管支を広げる薬や、炎症を抑える薬などを吸入する。体力を維持する運動も重要だ。運動不足が続くと体力が衰え、息切れがさらにひどくなりがち。散歩などがお勧めだ。腹式呼吸をすることで呼吸困難を防ぐ方法などもある。いずれの治療法も「男性より女性の方が効果が低い傾向にある」(石井センター長)とされるが、早めに治療を始めれば、それだけ悪化を防げる。

たばこを吸わないからといってCOPDと無縁とは言い切れない。受動喫煙も発症原因になるためだ。「喫煙者の肺にたまったたばこの煙は2時間ほど出続ける」(宮元理事長)。会社や家庭で分煙していても受動喫煙してしまう例もあるので注意したい。

たばこはがんも引き起こす。肺がんでも女性が気をつけなければならない点がある。「喫煙しない女性が、発見が難しいタイプの肺がんにかかるケースが増えている」と宮元理事長は指摘する。CTで検査すると病巣部がすりガラス状に映る。エックス線検査では見つかりにくいため、発見が遅れる場合もある。受動喫煙などが原因になっている可能性もあるが、はっきり分かっていないという。

たばこは心臓病や糖尿病のリスクも押し上げる。今吸っている人は「分かってはいるけれどやめられない」と諦めずに、禁煙に取り組んでほしい。

(草塩拓郎)

[日本経済新聞夕刊2012年3月16日付]

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