ライフコラム

エコノ探偵団

「1秒」の重み変わってる?  IT化、株取引一瞬で明暗 エコノ探偵団

2012/3/11 日本経済新聞 プラスワン

「1日を1秒長くする『うるう秒』を巡って世界各国が大激論をしたと聞きました。1秒の重みって変わってきたのでしょうか」。近所の大学生の情報に探偵事務所の所長が関心を示した。「大きなテーマですね。今回は私が調査しましょう」

「まず国際的な議論をおさらいしてみよう」。所長は日本の標準時間を管理する独立行政法人、情報通信研究機構(東京都小金井市)に向かった。広報部の広田幸子さんに話を聞くと「うるう秒を7月1日に挿入します」と答えてくれた。

今はセシウムなどの原子の性質を利用した「原子時計」で1秒の長さを決めている。8万6400倍すると24時間だが、現在の地球の自転周期はそれよりわずかに長い。そこで、うるう秒で調整する。ところが、いつ入れるか規則性がないため、コンピューターなどは手作業で変更しなければならず、コストがかかり、トラブルが生じる可能性もある。「昨年、国際会議で廃止が議論されましたが、結論は先送りされました」

■1000分の2秒で注文処理

「たかが1秒、されど1秒か。そういえば、株式市場では1秒よりずっと短い時間で取引できるようになったと聞いたぞ」

所長が東京証券取引所を訪ねると、担当者は「2010年1月に稼働した株式取引システムのアローヘッドは、それまで2~3秒かかっていた注文処理速度を1000分の2秒まで短縮しました」と胸を張った。コンピューターを使い高速で自動的に売買を繰り返すことで利益を増やそうとする海外の機関投資家のニーズに対応したという。

「個人投資家はどうなんだろう」。所長は自宅で株式のインターネット取引をしている東京都在住の男性(62)とコンタクトを取ることができた。その男性は「機関投資家にはかないませんが、1日に何度も売買するデイトレーダーにとって、1秒の違いは大きいです」と教えてくれた。

1円単位の値動きをみて株を売買しているが、この値段で売ろうと思っても、ライバルに1秒遅れただけで取引が成立しないこともある。「昔は証券会社に電話して注文するのが当たり前で、秒単位の勝負なんて考えもしませんでした」

「IT(情報技術)の発展で1秒の重みが増しているな」。所長がさらに調べてみると、様々な場面で「秒単位の争い」が増えていることがわかった。

■アクセスも秒単位の争い

大学生の就職活動では、会社説明会の参加申し込みなどをネットで受け付ける企業が増えた。先着順の場合もある。東京都内の男子大学3年生(21)は「受け付け開始ピッタリにアクセスしようとしても、1秒遅れるとつながらないことが多くて困ります」と話す。

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL