「つながる」って便利? 活発に往来 効率よく調達「ほころび」波及しやすくエコノ探偵団

取引が緊密に

「つなげようとするのは鉄道網だけ?」。調べてみると、店と店を結びつけようとしている例を見つけた。スーパー大手のマルエツだ。都心を中心にコンビニエンスストア並みの超小型店の出店を増やしている。通常の店は半径500~700メートルの地域をカバーするが、超小型店は半径300メートルに設定。1キロ弱の間に店が2つできるわけだ。

「お客さんの奪い合いになりませんか」。同社で明日香が尋ねると、斉藤浩さん(49)は首を振った。「むしろお客さんが立ち寄りやすくなり、スーパー側も効率がよくなります」。商品の配送は短時間で済み、複数の店舗を自転車で巡回することもできる。「近所にあるので、冷蔵庫代わりに頻繁に使ってもらうことを狙ってます」

調査を続ける明日香はハッと気づいた。「『つながり』が広がると、その輪の中にいる人たちの使い勝手がぐっと増すのは情報も同じだわ」。昨年3月の東日本大震災の直後にミニブログの「ツイッター」や交流サイト(SNS)で被災状況や必要な物資の情報をリアルタイムにきめ細かく伝えたことを思い出した。

企業間の取引関係に詳しい東京大学教授の渡辺努さん(52)にも話を聞いた。「ある1社の取引先、そのまた取引先というようにたどっていくと、4つ先までいけば、結びつきがあるのは50万社に上ることが研究で分かりました」。総合商社のように1万社以上と付き合いのある「ハブ企業」を挟むと、一挙に多くの企業と間接的な関係を持つことになるそうだ。

取引が緊密になると、原料調達がしやすいなどの利点が生まれ、効率的に生産や販売ができる。「つながる魅力は多いんですね」。明日香は目を輝かせた。

予想外の被害

うなずく渡辺さんは「でも」と続けた。「1社に何か問題が起こると、無関係と思える企業にまで波及してしまいます」。東日本大震災やタイの洪水ではサプライチェーン(供給網)が途切れ、大きな被害をもたらした。ショックも連鎖しやすくなっているわけだ。

「鉄道がしばしば遅れるとも聞いたわ」。首都圏を走る鉄道各社の運行情報を検索してみると、5分ほどの遅れまで含めればほぼ毎日、ダイヤの乱れは起きている。東京メトロの三宅さんに再度聞くと「地下鉄内でなくても、乗り入れ先で故障や事故があると影響が出ます」と打ち明ける。

震災後に広い範囲で実施された東京電力の計画停電も、事情は似ている。電力の消費が供給を上回りそうになると、電灯や照明がちかちかする「瞬時停電」が起きる。いわゆる大停電の前触れだ。ところが、電力会社はどこで起きているのか正確につかめない。そこで、変電所ごとに電気の供給を止めてしまう計画停電に追い込まれたとされる。

ネットから個人情報が流出することもある。「便利な半面、危険が増える。どうすればいいのかしら」。JR東日本の渡辺さんに聞くと「事故が起きた場所を避け、折り返し運転などに素早く切り替えるため、一時的に列車を止める留置線などを増やしています」と答えてくれた。つながりをいったん「切る」わけだ。

震災やタイ洪水で深刻な影響を受けた精密機械メーカー、ミネベアが出した答えは「迂回路」を増やすことだった。同社の加藤木洋治さん(62)は「カンボジアの工場で増産したり、新たな取引先開拓を急いだりしています」と話す。

ネットワークの経済を分析するキヤノングローバル戦略研究所の大西立顕さん(35)がまとめてくれた。「利点と危険を見極めながらつながり方を常に見直すことが、中長期には利益につながります」

「私も最適なつながりを考えていきます」。報告の最後に明日香が添えると所長がひと言。「まず報告書からだな。君の文章はつながりが分からないんだ」