デジカメ、無線でもっと便利に 画像の転送も楽々
メモリーカードなど対応機器 相次ぐ
「シャッターチャンスがきたのにメモリーカードの空きがないばかりに逃した」「カードが壊れて大切な写真が消えた」――。デジタルカメラでこんな経験はないだろうか。撮影した写真はまめにパソコンへ取り込むことが肝心だが、手間がかかるため、ついそのままになりがちだ。そんなときに便利なのが、無線通信機能を内蔵したメモリーカード。カメラに入れておけば、画像を自動的にパソコンに保存してくれる。
「発売から3年が過ぎたが、ここにきて前年同月比約3倍のペースで売れている。特に自動バックアップの機能が支持されている」と話すのは、米アイファイ日本法人の田中大祐社長。
同社の「Eye-Fi X2」は外観は普通のメモリーカードと変わらない。内部に無線LAN(構内情報通信網)回路とネット接続用ソフトを組み込んである。つまりEye-Fi X2を装着したデジタルカメラは、ネットに接続可能な機器に早変わりする。
残量不足も回避
使い方は簡単で、接続条件を事前に設定しておくだけ。撮影を終えて自宅に戻ったら、カメラの電源を入れる。すると家庭内の無線LANを認識し、自動的にパソコンに写真を保存し始める。煩わしい作業をしなくて済み、忘れることもない。
「エンドレスモード」と呼ぶ便利な機能もある。指定した残量を超えてメモリーカードが使われている場合、取り込み済みの写真のうち古いものから順にメモリーカードから削除する。例えば設定値が40%なら、自宅を出る時には必ず60%分の空き残量がある状態にできる。これなら残量不足でシャッターチャンスを逃すことがなくなる。
家庭内の無線LANにつないだ際、オンラインアルバムサービスや交流サイト(SNS)と連携させることも可能だ。取り込み先として、インターネット上にデータを保存するクラウドサービスを指定できる。米グーグルの「ピカサ」米ヤフーの「フリッカー」、ミクシィやフェイスブックなど25以上の主要サービスに対応する。
クラウドに保存しておけば、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を使って、外出先から写真を見ることができる。旅行写真をネットで公開して同行した知り合いに見てもらうといった使い方もできる。
同社以外にも無線機能付きメモリーカードが登場している。プラネックスコミュニケーションズ(東京・渋谷)が2011年10月に「Flucard」を発売、東芝も10日に「FlashAir」を売り出す。キヤノン「IXY 420F」や富士フイルム「FinePix Z1000EXR」のように無線機能を内蔵したデジタルカメラも出てきた。
スマホ通じSNSに
各社が提案に力を入れているのが、スマホとの連携だ。撮影した写真を無線を使い、その場でスマホに転送する。デジタルカメラの写真をスマホを介し、すぐに電子メールで送信したり、SNSに投稿したりできる。「スマホのカメラ機能は向上したが、暗い場所が苦手など弱点もある。画質面で軍配が上がるデジタルカメラの写真をすぐにネット公開できるのが利点」(米アイファイ日本法人の田中社長)
最近は小型で高画質の「高級コンパクト」をうたうデジタルカメラが増え、デジタル一眼カメラの価格も下がってきた。こうしたカメラに無線機能付きメモリーカードを装着すれば、美しい夜景や印象深い料理などの写真を、外出先からスマホ経由でネットに送信できる。上手に使いこなせば、保存作業が楽になるだけでなく、デジタルカメラを持ち歩く楽しみを何倍にも広げてくれそうだ。
(産業部 高田学也)
[日本経済新聞夕刊2012年3月1日付]
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