メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積が糖や脂質の代謝に異常をもたらし、それによって起こる動脈硬化や血圧上昇などが全身の血管に少しずつ障害を与えていく病気だ。初期には症状がほとんど無いが、放置しておくとドミノ倒しのように病気が進行し、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、失明などをもたらすことが知られている。その過程でひそかに進行するのが慢性腎臓病だ。

慶応義塾大学病院腎臓・内分泌・代謝内科の伊藤裕教授は「体の臓器のなかで血管の障害の影響を受けやすいのは、体全体の血液の30%を使う腸と20%を使う腎臓。慢性腎臓病という概念が社会に広まり、早期発見が行われると、心臓血管障害など重要な病気の予防にもつながる」と話す。

九州大学大学院医学研究院の研究グループが福岡県久山町の男女2634人を対象に行った調査(1988~2000年)では、慢性腎臓病の患者はそうでない患者と比較して、心臓血管障害の累積発症率が約3倍高いという結果が出た。

慢性腎臓病の診断の指標となる検査値が「GFR値(糸球体ろ過量)」で、1分間に腎臓の糸球体をろ過してできる原尿の量を示す。90以上が正常。60未満が慢性腎臓病と診断され、専門医の治療が必要だ。

GFR値を厳密に測定するには精密な検査が必要だが、最近では企業の定期健康診断の血液検査の項目でもある血清クレアチニン値より推定GFR値を計算することができるようになった。検査結果の項目に推定GFR値が書かれていない場合は、日本慢性腎臓病対策協議会のホームページなどに自動換算機能が設けられているので、血清クレアチニン値、年齢、性別を入力すれば推定GFR値を知ることができる。

伊藤教授は「60未満というのは、慢性腎臓病がかなり進んだ状態。腎臓は機能が衰えはじめると進行が速い。60以上90未満で血圧が高めという人は、腎臓の専門医に相談した上、血圧の管理など生活改善を心がけたい」と話す。