うまいイラストを描く3つのワザ

2012/2/17

暮らしの知恵

気の利いたイラストを添えた手紙や伝言メモなどをもらうと「こんな絵を自分でも描けたら」と思う。思うだけで、ここ数十年、絵など描き添えたことがない。いいねと思わせるような絵、いや、せめて何を描いたのか見た人がわかる絵を描きたい。うまいイラストのコツを探った。

身近で分かりやすいものとして人物・動物・植物を描くことにする。人物は誰でも知っているだろう野田佳彦首相、動物は自分が好きだから猫、植物は店先に並ぶ中からチューリップを1輪買い求めてきた。コピー用紙に水性ボールペンで、とりあえず描いた。

自分の思う線を描くのは、なかなか難しい。野田首相の目、鼻、口を描いても、個性や特徴を出すところまではまったくたどり着かない。猫の前脚は胴体のどこにつながっているのか。モデルを見ながらなのに、形が定まらない。

「シベリアンハスキー?」。自ら描いた猫を見せると、同僚は開口一番、そう言った。種の壁を楽々と越え、違う動物に見えるようだ。野田首相は「ジャズミュージシャン?」。チューリップに至っては「丸めた紙くずかと思った」。うーむ、植物だとさえわからないようだ。

何とか改善できないかと「なぞってカンタン!立体スケッチ練習ノート」の著者、染森健一さんを訪ねた。

下から構造観察、線描き込みすぎず

「この猫、耳から描き始めたでしょう?」。わが作品を並べると、染森さんは即座に指摘した。確かに記者は、とんがった耳から描き始めた。

初心者が人物や動物を描くとき、まず顔を見て、そのまま顔から描き始めることが多いのだという。その後から描く下半身や足元を紙の中に収めようと意識すると、下に進むにつれて、実際に見えているよりも小さく描いてしまうのだそうだ。

染森さんの勧める第1のコツは「対象を下から観察する」だ。下から見ると、どのように人や物が立っているのか、力のかかり具合や骨格などの構造を理解しやすくなるという。そうすると頭、体、手足など描く部分のバランスがよくなり、画面に無理なく収まる。

ちょこんと座った猫を前脚から描き始めた。力がこう入っているな、ここに骨があるなと想像しながら後ろ脚、少し見えている尻尾へと進む。おっ、猫らしい背中の曲線が描けた。チューリップは葉、茎、花の順だ。上へと伸びる植物の勢いが少しは感じられるようになった。「ずいぶんよくなりましたね」と染森さんにほめてもらった。

続く第2のコツは「輪郭線を強く描く」。ものと周囲との境になる輪郭線を強い線で描くと、存在感がはっきりする。また、手前のものは太い線で、奥のものを細い線で描くと絵に遠近感が出てきて、立体的に見えてくるのだそうだ。

太い線と細い線を描けるサインペンを使い、もう一度試してみた。野田首相の頭と顔の輪郭、背広の線は太く描く。ただ、耳や鼻は難しいところ。背広の襟は、ネクタイは、どうか。どこを太い線にするのか、悩みながらの作業が続く。

「どの絵も、線が整理されましたね」。できあがったイラストへの染森さんの講評だ。描き込めば、うまい絵になるという単純なものではないようだ。線が増えて画面がうるさくなるだけだという。「特に顔は線を描き込みすぎないように」と助言を受けた。

まだ実感でつかめない「簡略な線」を求めて、今度は「サインペンでイラスト」の著者、我那覇陽子さんを訪ねた。

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