銀婚式 篠田節子著ビジネスマンの生活 リアルに

2012/2/9
(毎日新聞社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

徹底してリアルだ。高澤修平がニューヨークの現地法人で働いていたときに証券会社が破綻し、その後始末が終わって帰国してから損保会社に転職。ところがそれがリストラ担当職で心身ともに疲労困憊(こんぱい)。そこも辞めて3度目の職は新設大学の講師。ニューヨーク時代に妻とは離婚し、息子も妻に引き取られたので高澤修平は独り身だ。仙台郊外の地に引っ越しても何の問題もない。もっともその大学も安住の地ではなく、修平はずっと振りまわされる。

 そういう仕事の日々がひたすらリアルに語られていく。責任感ある普通のビジネスマンが、バブル崩壊後の現実をどう生きていったのかが詳細に描かれるのである。

 仕事の日々だけではない。息子が成長していくと、受験の問題が出てくる。妻とは離婚したとはいえ、修平が父親であることに変わりはないからその都度相談に応じなければならない。義母の介護も、その家に息子が一緒に暮らしているかぎり息子と無縁にはならないから、それも重要な問題だ。つまり、ここにあるのは私たちの生活だ。私たちの人生だ。だから、この物語にどんどん引き込まれていく。

★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2012年2月8日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

銀婚式

著者:篠田 節子.
出版:毎日新聞社
価格:1,680円(税込み)


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