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エコノ探偵団

風邪でも会社休みにくい? 「出勤は美徳」「自分は必要」

2012/1/29 日本経済新聞 プラスワン

探偵の松田章司が身支度をしていると、アパートの隣の主婦が心配顔で訪ねてきた。「風邪なのに夫が出社しました。なぜ会社を休めないのでしょう」。「高熱を押しても仕事に出かけるという話はよく聞くぞ」。章司は早速調査を開始した。

「そもそもどのぐらいの頻度で風邪を引くのか、そこから調べないと」「それならうってつけのデータがあります」。たまたま事務所に来ていた気象情報会社、ウェザーニューズの徳丸友紀さん(26)だった。

同社の調査によると、平均的な日本人は1年に2回以上風邪を引くものの、熱が38度まで上がらないと会社や学校は休まない。風邪でも休まなかった人の割合は年齢が上がるにつれて高くなり、40代では35.9%に達するという。

■チームで仕事、言い出しにくく

「無理をし過ぎている気がするけどなあ」。理由を確かめるため、章司は人事管理に詳しい日本総合研究所の高橋敏浩さん(52)に話を聞きに行った。高橋さんは「多少のことがあっても出勤するのが美徳だとずっと考えてきました。その影響が大きいのでしょう」と教えてくれた。

「最近は結果重視の成果主義が主流になってきたと聞きましたが……」。食い下がる章司に高橋さんは首を振った。「それは1990年代半ばまでの話。今はプロセスにおける貢献度やチームの成果などを重視する新しい人事評価制度が多くの企業で導入されています」。かえって突発的な休みが言い出しにくい環境になっているという。

「職場の声も拾わなきゃ」。章司は日用品メーカーのライオンへ向かった。医薬品も手掛けるし、無理して働く人はいない。そんな予想は統括産業医の西埜植規秀さん(36)にあっさり打ち砕かれた。「37.5度になれば帰宅するという社内ルールはありますが、そのまま働き続ける人もいます」。徹底するのは難しいようだ。

章司が事務所に戻ると、高橋さんが待っていた。「働き手の意識がなかなか変わらないことや、上司の意識改革が遅れていることも影響しているかもしれません。その点でちょっと気になったのがこの資料です」。先ほど訪ねたライオンが昨秋に実施した風邪の実態調査。対象は働く人だ。

高橋さんが注目したのは、休んだ日の給与や薬の購入代とその手間など、1回風邪を引くとどのぐらい損をした、稼ぎ損なったと思うか、という質問の回答だった。20代の1万3841円に対し30代が2万4097円、40代は2万9948円。働き盛り世代ほど代償が大きいと感じている。

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