厳しい寒さが続くと、温泉に入って体の芯から温まりたくなる。特に広々とした露天風呂は開放的で気持ちがいい。ゆっくり湯船につかれば、日ごろのたまったストレスや疲れが癒やされるだろう。温泉の専門家に家族や友人と楽しめるおすすめの日帰り可能な露天風呂を聞いたところ、自然に囲まれ雄大な景色が楽しめる場所が上位に入った。
1 | 320ポイント 西の河原露天風呂 群馬県草津町 |
草津温泉の日帰り専用の施設。男湯、女湯合わせて500平方メートルの湯船があり、それぞれ100人が一度に入っても余裕があるという。湯船の中を移動すると温度の変化が体感できる。周囲には山々の豊かな自然が広がり開放的。温泉は白濁した湯畑の湯とは違って、透き通るような淡い緑色をしている。「男女ともプールほどの広さがあり、豊富な湯量でかけ流し。一度は行きたい」(岩佐十良さん)、「温泉地そのものの魅力も味わってほしい。酸性硫黄泉のため肌の弱い人や子どもは刺激に気をつけて」(西村りえさん) (1)500円(2)午前9時~午後7時半(4月末からは午前7時)、年中無休(3)0279・88・6167(4)長野原草津口駅からバス約30分、温泉街から徒歩約15分
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2 | 290ポイント 山みず木 熊本県南小国町 |
黒川温泉街から離れた山中にある落ち着いた雰囲気の旅館。渓流沿いの男女別の露天風呂は川のせせらぎを聞き、雑木林の自然を味わいながら湯につかる。冬は雪景色、夏は川でヤマメが泳ぐ姿を見ることもできる。温泉は無色透明でなめらか。「渓流のせせらぎが琴線に触れ、黒川でも人気が高い」(松田忠徳さん)、「鳥や虫の声が心地よい」(山口貴史さん) (1)500円(2)午前8時半~午後8時半、6月末を除き年中無休(3)0967・44・0336(4)阿蘇駅からバス1時間弱、温泉街から送迎バス
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3 | 280ポイント 砂湯 岡山県真庭市 |
湯原温泉にある天然露天風呂。すぐそばに高さ74メートルの湯原ダムがそびえる。川底からプクプクと噴き上げながら湯が湧いていることから「砂噴き湯(砂湯)」と呼ばれる。男女別の脱衣所があるが、3つの湯船はすべて混浴。視界が開けているので、気になる人はタオルを巻いて入浴することができる。地元住民らが清掃と管理をする。温泉は無色透明で癖がない。「足元の砂利から自噴する適温の湯。無料開放された自然の露天風呂が気持ちよい」(郡司勇さん) (1)無料(2)24時間、水曜午前、第1金曜の日中は休み(3)0867・62・2526(湯原観光情報センター)(4)中国勝山駅からバス約35分
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4 | 270ポイント 汪泉閣 群馬県みなかみ町 |
利根川の支流沿いにある宝川温泉の旅館。200畳の「子宝の湯」など4つの露天風呂のうち、3つが混浴で1つが女性専用。木々や川の自然を満喫できる。温泉は無色透明でさらさら。「広くて、まるで河原で遊んでいる気分」(坪田三千代さん) (1)1500円(2)午前9時~午後5時、年中無休(3)0278・75・2611(4)水上駅からバス約35分
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5 | 255ポイント 杉乃井ホテル 大分県別府市 |
観海寺温泉の大規模ホテル。湯船を棚田状に広げた男女別の露天風呂「棚湯」は別府湾を一望できる。水着着用エリアは夜に噴水ショーも。温泉は無色透明。「温泉プールがあるので、3世代で行くのもよい」(井門隆夫さん) (1)平日1500円、土日祝2000円(2)棚湯は午前9時~午後9時半、年中無休(3)0977・24・1141(4)別府駅から送迎バス約10分
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6 | 240ポイント 大丸温泉旅館 栃木県那須町 |
那須温泉郷奥地の老舗旅館。裏山から湧き出す温泉がそのまま川の露天風呂になっている。温泉は無色透明でやわらか。3つの混浴風呂(1つは冬季閉鎖中)のほか女性専用もある。「湧きたての温泉は至福のぜいたく」(石井宏子さん) (1)1000円(2)午前11時半~午後2時半、週により火曜から金曜定休(3)0287・76・3050(4)那須インターから車で30分
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7 | 235ポイント 山のホテル 夢想園 大分県由布市 |
由布院温泉の高台にある。男女別100畳規模の露天風呂で、由布岳の雄大な眺望が楽しめる。温泉はアルカリ性でさらっとしている。貸し切り風呂も。「眼下に田園が広がり開放的。名物のプリンもおすすめ」(渡部孝範さん) (1)700円(2)午前10時~午後3時、露天風呂は男性は金曜定休、女性は火、水曜で一部定休(3)0977・84・2171(4)由布院駅から車で5分
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8 | 220ポイント 泡の湯 長野県松本市 |
北アルプスの自然に囲まれた白骨温泉の旅館。乳白色の混浴の露天風呂がある。温泉は38度前後とぬるめだが、炭酸ガスを多く含んでいるので体が温まる。冬季は周辺道路が閉鎖になることもあり要確認。「白濁なので、入りやすい混浴」(遠間和広さん) (1)800円(2)午前10時半~午後1時半、木曜定休と臨時休業あり(3)0263・93・2101(4)新島々駅からバス約70分
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9 | 215ポイント 黄金崎不老ふ死温泉 青森県深浦町 |
ひょうたん型の混浴露天風呂のある旅館。日本海が目の前に広がり、波しぶきを眺めながら湯につかる。鉄分を含む茶褐色の湯は、日の光を浴びると黄金色に。女性専用の露天風呂もある。「陸・海・空すべての自然を満喫できる」(小堀貴亮さん) (1)600円(2)午前8時~午後3時半、年中無休(3)0173・74・3500(4)ウェスパ椿山駅から送迎バス
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10 | 210ポイント ほったらかし温泉 山梨県山梨市 |
日帰り専用。「あっちの湯」「こっちの湯」の2つの浴場(男女、料金別)があり、天気が良ければ朝日と富士山をのぞむ。犬の温泉付き預かり所もある。「甲府盆地を見下ろし、富士山と対面。ぬるめの温泉なのでのんびりくつろげる」(のかたあきこさん) (1)各700円(2)日の出1時間前~午後9時半、年中無休(3)0553・23・1526(4)山梨市駅から車で10分
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1位は自然湧出量が日本トップクラスである草津温泉の西の河原露天風呂。あちこちから温泉が噴き出す「西の河原公園」の一番奥にある入浴施設で、広さと景観が売り物だ。温泉街にある源泉「湯畑」やかき混ぜて湯の温度を下げる「ゆもみショー」などを見学するのも楽しい。
2位の山みず木は渓流沿いにある静かな旅館。露天風呂は川や雑木林など自然に囲まれ、ゆったりとした時間が過ごせそうだ。黒川温泉は3つの旅館の露天風呂に入浴できる「入湯手形」(大人1200円)を発行しているので、温泉巡りもできる。
唯一、無料で入れるのが3位の砂湯。川の中にあり、ダイナミックな自然の営みを肌で感じることができる個性豊かな天然温泉だ。すぐ近くに足湯もある。
1位と10位のほったらかし温泉以外は、すべて混浴風呂がある(7位の山のホテル夢想園は貸し切り露天風呂)。広い湯船で家族そろって一緒に温まることができる。
5位の杉乃井ホテルは露天風呂「棚湯」とは別に、水着で入れる温泉施設「ザ アクアガーデン」がある。温泉泥を使ったトリートメントパックも楽しめる。
冬季に注意したいのは交通アクセスの問題だ。1位、2位、3位、4位、6位、8位、9位は雪の多い地域にある。一面の銀世界を湯船から眺めるのは憧れだが、たどり着くまでの道路は滑りやすくなっている。冬用タイヤの着用を心掛けるほか、公共交通機関を利用するのもよい。
春~秋限定の魅力的な温泉も
ランク外では、新穂高温泉(岐阜県高山市)、万座温泉(群馬県嬬恋村)、南紀勝浦温泉(和歌山県那智勝浦町)の露天風呂を支持する声が多かった。
入浴期間が限られているが、評価が高かったのが蔵王温泉大露天風呂(山形市)。源泉のすぐ近くにある男女別の日帰り入浴施設だ。オープンは4月下旬から11月下旬ごろまで。
川底から湧き出る約70度の源泉に、川の流れを引き入れてほどよい温度に調整する川湯温泉の仙人風呂(和歌山県田辺市)も人気だった。12月から2月末の冬場だけの無料の天然風呂だ。
表の見方 数字は選者の評価を点数化。(1)入浴料(2)入浴受付時間と定休日(3)問い合わせ先(4)公共交通機関などを使った主なアクセス方法
調査の方法 専門家の意見やガイド本などをもとに、日帰り入浴が可能で家族で行きやすく、規模が大きい全国の温泉露天風呂70カ所を候補として選出。温泉の専門家に候補外も含め、10位まで挙げてもらい、順位を決めた。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
井門隆夫(井門観光研究所代表)▽石井宏子(温泉ビューティ研究家)▽岩佐十良(「自遊人」編集長)▽郡司勇(温泉研究家)▽小堀貴亮(大阪観光大学講師)▽坪田三千代(旅エディター&ライター)▽遠間和広(温泉ソムリエ家元)▽西村りえ(温泉ライター)▽のかたあきこ(町・人・温泉フリーライター&編集者)▽松田忠徳(札幌国際大学教授)▽山口貴史(サイト「源泉かけ流しどっとねっと」運営)▽渡部孝範(雑誌「温泉博士」発行者)