2012/1/28

おでかけナビ

龍潭寺の書院から庭園を望む。西日が差すと、庭全体が仏殿の趣に

1200年前に空海によって開かれたとされる長楽寺の庭もまた、山や湖とともにある。2000平方メートルの斜面に200株あまりのドウダンツツジ。その名は「満天星の庭」。長年常駐の住職がおらず寺は荒れていたが、庭に魅せられた山口和章さん(60)が2011年3月に横浜から移り住み、庭番を務める。「客殿に座って浜名湖を模した池を眺めると船に乗っている感じがする。築山に上るとかなたに浜名湖が望める」と解説してくれた。

北正面を仰ぐと、遠く山の中腹に巨岩が見える。朝日、夕日を受けて光る岩を霊地とみてお堂が建てられたという。夜になると岩の真上に北極星が光る。

仏教では現世は東、彼岸は西。西日を効果的に受けるように作られた庭も多い。井伊家の菩提寺として、また名庭園で知られる龍潭(りょうたん)寺もそのひとつ。住職の武藤全裕さんは「庭はぜひ東の書院から西に向かって観賞してほしい。林を通して西日がさすと、自然空間全体が無限の仏殿となる」と作庭家の意図を語る。

帰りの天竜浜名湖線で、ユリカモメの大群に遭遇。100羽はいようか、白い羽を羽ばたかせ、茜(あかね)色に染まる浜名湖に一斉に飛び立った。豊かな自然に抱かれる、もうひとつの庭園世界。ぜいたくなふたつの自然を満喫した。

(編集委員 野村浩子)

<旅支度>庭を見ながら湖北五山巡り
 奥浜名湖へはJR東海道線の新所原駅で天竜浜名湖線に乗り換えるか、浜松駅から遠鉄電車(新浜松駅)に乗り、西鹿島駅で天竜浜名湖線に乗り換える。浜松駅から遠鉄バスも利用可。寺を巡る公共交通機関は少ない。
 摩訶耶寺、長楽寺、龍潭寺のほか、実相寺の枯山水庭園、元禄時代に茶祖の山田宗偏が手をいれたとされる大福寺庭園もぜひ訪れたい。湖北地方で国指定重要文化財のある「湖北五山」(初山宝林寺、龍潭寺、方広寺、摩訶耶寺、大福寺)を巡るのも楽しい。

[日本経済新聞夕刊2012年1月25日付]

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