岐阜・飛騨古川 飛騨の匠のふるさと気品の町に息づく技

「ともかくも古川町の町並みには、みごとなほど、気品と古格がある」。司馬遼太郎が「街道をゆく」の飛騨紀行にこう記した岐阜県飛騨市の古川町。いにしえの平城京の造営に活躍した「飛騨の匠(たくみ)」のふるさとは、その伝統を受け継ぐ匠の技が町のたたずまいに息づき、ゆったりとした人々の暮らしの中に溶け込んでいた。

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武家屋敷と商人町を画した瀬戸川沿いに白壁土蔵が連なる

木造りの駅舎が美しいJR高山本線の飛騨古川駅を降り立つと、鮎飛(あゆとび)定男さん(76)が出迎えてくれた。この地で左官業を営んできた匠の一人だ。還暦を節目にボランティアでふるさと案内人を始めて十数年。県認定の「飛騨の語り部」が「案内した人は4万人を超えました」と目を細める。

冬の冷気を浴びながら歩く町並みは引き違いの玄関戸、出格子、出窓の町屋と、粋な小料理屋など商家が軒を連ねる。小さな水路、瀬戸川べりに立つ2軒の造り酒屋の白壁土蔵の建物は国の登録有形文化財。人気の観光スポットだ。

程なくして町の中心部にある広場に面した飛騨古川まつり会館へ。館内には高さ6、7メートル、絢爛(けんらん)豪華な屋台の実物が並び、コンピューター制御のからくり人形が来館者をひきつける。

これらは毎年4月に開かれる古川祭の主役だ。祭りの光景は館内の大画面に立体画像で常時、再現される。さらし姿の裸の男たちがぶつかり合い、やぐらの上に乗って太鼓を打つ勇壮な「起し太鼓」の前夜祭、翌日は華やかに装飾された屋台行列の時代絵巻が町中を行く古川祭は町の自慢だ。

画像で見た「起し太鼓」が会館と目鼻の先の御旅所という社に鎮座している。鮎飛さんに促され、居合わせた初老の夫婦らが試し打ちに興じた。

近くには1989年に完成した「飛騨の匠文化館」がある。よろい壁の蔵造り風のこの建物は「飛騨の木材で地元の大工が建てた。柱や梁(はり)は釘(くぎ)やボルトは使わずに組手(くみて)、継手(つぎて)で築き上げた」と飛騨古川建築組合連合会事務局長の直井隆次さん(63)。館内には大和朝廷以来の匠の足跡や技術、古来の大工道具などが展示されている。柱と梁などを強固につなぐ複雑な形の「継手」「仕口」「組手」を見学しようと、各地の建築関係者らが訪れる。

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