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世界遺産、いいことずくめ? 活性化に期待、生活に制約も エコノ探偵団

2012/1/9 日本経済新聞 プラスワン

環境を守ることと、便利さや豊かさを手に入れることを両立するのは簡単ではない。世界遺産、ドイツ東部の「ドレスデン・エルベ渓谷」では、渋滞解消を狙い渓谷の中心部に4車線の橋がかけられたため、景観が損なわれたとしてユネスコが登録を抹消した。地元には覚悟が求められる。

明日香は報告書にこう記した。「街おこしに期待が膨らみますが、保護を忘れてはダメ。バランスをとるのは簡単ではありません」

<「無形」「記憶も」も対象に>祭事や絵画を後世に伝える

日本の代表的な伝統芸能「能楽」は08年に無形文化遺産になった

世界遺産条約は40年前の1972年に採択された。日本の加盟はそれから20年後の92年で、世界では125カ国目、先進国では最も遅かった。理由は諸説あるが、欧州と建築文化が異なり、国内の寺社などは世界遺産に認められにくいとの判断があったとされる。欧州では昔の姿がそのまま残る石造りの遺跡や建造物が多い。日本の木造建築は補修や建て替えをして後世に伝えてきた。

形のあるモノを受け継ごうとした世界遺産に加え、形のない文化を守ろうと2003年に始まったのが「無形文化遺産」。芸能や祭事、伝統工芸技術などが対象で、現在267件ある。世界遺産が少ないアジアやアフリカの登録も数多い。日本からは能楽や歌舞伎など20件が選ばれている。

さらに、ユネスコは歴史上重要な文書などを後世に伝える「世界の記憶」事業も進める。アンネの日記など245件が登録されているが、日本では炭鉱の様子を記録した山本作兵衛の絵画や日記のみ。ユネスコ前事務局長の松浦晃一郎さん(74)は「世界遺産だけでなく、この仕組みも活用してほしい」と話す。モノや自然にとどまらず、後世に残すべき人類の英知は多い。

(畠山周平)

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