世界遺産、いいことずくめ? 活性化に期待、生活に制約もエコノ探偵団

明日香は世界遺産に詳しい国立美術館理事長の青柳正規さん(67)の元にも足を運んだ。「登録の準備に地元自治体などの出費がかさむのも忘れてはいけません」。申請に必要な書類を作るには、対象となる遺跡や自然の現状や歴史的な意義などを専門家に調査してもらわなければならない。保護のために土地の買収や施設整備をすることもある。必要な額は多ければ数十億円に膨らんでしまう。

審査が厳しく

しかも、最近ユネスコは世界遺産を乱発しないよう審査を厳しくしている。多額の税金が無駄になる可能性も小さくない。「これからは数十年間活動を続ける心構えでないと」と青柳さん。これを嫌って、09年に活動をやめたのが山形県だ。「他の事業に予算を使うべきだと判断しました」

「すべてバラ色とはいかないようね」。つぶやく明日香の耳に、合掌造りで有名な岐阜県白川村からも問題点を指摘する声が。「世界遺産になってから景観が損なわれたんです」。白川村教育委員会の松本継太さん(36)だった。

観光バスや乗用車の乗り入れが多くなり、周辺の道路は渋滞が目立つように。しかも風景の一部となっている農地を、無許可で有料駐車場に転用する住民も出てきた。村は集落の中心部にある村営駐車場を今年3月末で廃止すると決定。住民にも駐車場を農地に戻すよう呼びかける。

北海道の知床では昨年から、知床五湖(斜里町)の入場を制限する時期を設けた。植物などが傷まないようにするためだ。「世界遺産の目的は貴重な自然や文化の保護。観光振興で損なってしまっては、本末転倒よね」。うなる明日香の携帯電話に後輩探偵の松田章司から連絡が入った。「小笠原諸島ではペットの飼育に特別な決まりがあるようです」

話は本当だった。東京都小笠原村は1999年に「飼いネコ適正飼養条例」を施行。野生化しないように、飼うときは村への登録を義務付け、繁殖も制限するよう求めている。村役場の柴垣佳久さん(47)は「希少な鳥のハハジマメグロなどの生き物を襲うからです」と話す。世界遺産を目指す鹿児島県奄美大島の5市町村も、昨年10月からほぼ同じ規制を取り入れた。