すべて真夜中の恋人たち 川上未映子著男女の交流、きれいに掬いあげ

2011/11/4付
(講談社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

もう各紙誌で話題になっている川上未映子の新刊だ。今回は、いわゆる非モテ系の男女の交流が描かれる。

 主人公はフリーランスの校閲者。自宅で仕事をしている。だが徐々に精神のバランスを崩しかける。ある日、自分を鼓舞して出かけたカルチャースクールで、高校の物理の教師だという中年の男性(三束さん)と出会う。だが、2人の関係はぜんぜん進展しない。

 喫茶店で話をするだけの2人。それも約束の時間さえ間遠で、ときどき会って話をする程度。読者はイライラのしっぱなしなのだが、そんな2人でも少しずつ少しずつ距離を縮めていく。

 ラスト近く。2人はフランス料理店で食事する。その後、歩いて散歩する。この場面がいい。詩である。詩集を読んでいるような気がする。川上の筆は2人の関係の淡さ、はかなさをきれいに掬(すく)いあげている。

 前作『ヘヴン』ほどリアルではないかもしれない。しかし川上未映子は確実に小説家として前進している。

 私は初出誌で読んだが、単行本ではさらに手が入り、三束さんも非モテの男性だったことが明確に。今年、記憶に残る一冊。

★★★★

(陣野俊史)

[日本経済新聞夕刊2011年11月2日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

すべて真夜中の恋人たち

著者:川上 未映子.
出版:講談社
価格:1,680円(税込み)