500円玉だけなぜ流通増える? 電子マネーと「使い分け」エコノ探偵団

「ヒントかもしれない」。章司が第一生命経済研究所に向かうと、首席エコノミストの熊野英生さん(44)が応対してくれた。「どこでも電子マネーを使えるわけではないので、かさばらず使い勝手の良い五百円玉と千円札も持ちます。小銭で財布やポケットを膨らませたくない人にとって『お金』とは五百円玉、紙幣、電子マネー、クレジットカードのことです」

100円ショップ、キャンドゥ荻窪タウンセブン店(東京都杉並区)の店長、川脇大治郎さん(38)も「余分な小銭を嫌う客が目立ちます」と証言する。「例えば630円の代金ならば1130円を支払い、釣りに五百円玉をほしがる客が数年前より増えました。五百円玉を受け取ることも多いのですが、釣り銭としてまた出て行くのであまりレジにはたまりません」

両替機も対応

「五百円玉は硬貨というよりも紙幣に近い動きをみせます」。通貨に詳しい一橋大学教授の北村行伸さん(55)が章司に、紙幣と硬貨の流通残高のグラフを見せた。「主な紙幣と五百円玉は同じく右肩上がり。デフレの定着で500円以下の商品が増え、千円札などの紙幣の釣りとして五百円玉のニーズが高まっているからだと思われます」

北村さんが五百円玉の需要増に貢献したと考えるのが自動販売機だ。「千円札が使える自販機は普通、釣りの中に五百円玉がまじります。五百円玉の方が百円玉5枚よりも内部の空間を節約できるので、メーカーにはありがたいのです」

インターネットを通じた新生フィナンシャルの4月調査によると、20~50歳代の男性サラリーマンが昼食にかけるお金は平均490円。01年より3割低い。小遣いの減少傾向が続く現状に外食店が対応、五百円玉1枚で払える「ワンコインランチ」が目立ってきた。

日本レストランエンタプライズは8月、東京のJR渋谷駅地下のレストランで500円の日替わりランチを出し始めた。同社の斎藤大輔さん(37)は「もともと500円以下の飲料だけを注文する客も多いので、釣りの五百円玉は両替し、多めに用意しています」

メーカーのグローリーは10月、新型の両替機を発売した。内部空間の一部を五百円玉と百円玉の間で融通できる。需要が高い方の硬貨には広く、低い方には狭くする。同社の小池憲弐さん(53)は「両替機を使う商店主などに五百円玉の人気が高く、金融機関は中にためておくコインの枚数を柔軟に増減できる機械を求めていました」と話した。