腸の働きを高める乳酸菌やビフィズス菌。ヨーグルトや飲料を通じてなじみが深く、免疫力を高め、病気の感染を防ぐといった効用があることも良く知られてきた。どのように摂取するのが効果的なのか、専門家の話を聞いた。
日本人の死因の1位はがん。体の部位別に見ると大腸がんによる死亡数が、1950年の4千人弱から2008年の4万3千人弱まで年々増え続けた。最新の10年の調査では、肺がん、胃がんに次いで大腸がんの割合は3位。女性だけで見ると1位になる。腸内細菌に詳しい理化学研究所の辨野義己農学博士は、「腸内で二次胆汁酸などの発がん物質を作る、悪玉菌を優勢な状態にし続けていることが原因」という。
腸内の悪玉菌には大腸菌やウェルシュ菌などがある。増える最大の原因は肉の食べ過ぎだ。東京大学の光岡知足名誉教授は「特に赤身の肉が悪玉菌による腐敗を招く」という。便やおならの悪臭が気になり、便秘にもつながる。世界がん研究基金などが2007年に公表したリポートにも、「大腸がんのリスクを上げるのは肉やアルコール」と記されている。
一方、腸内の状態をきれいにして、お通じの改善をもたらしてくれるのが、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌だ。「野菜、海藻などに多く腸内をきれいにする食物繊維を取ると乳酸菌が増え、ビフィズス菌は野菜や豆に多いオリゴ糖を餌とする」(光岡さん)。
このため、腸内環境を改善するには、野菜や海藻、豆を多く取り、肉を食べ過ぎないようにすることが大切だ。健康な人の腸では、善玉菌の割合が2割以上、悪玉菌が1割以下になっている。それ以外は日和見菌と呼ばれ、善玉菌が優勢であれば似た働きをしてくれるが、悪玉菌が優勢だと逆の性格を持ってしまう。
野菜などに含まれる食物繊維は今では第六の栄養素と呼ばれる。厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」で1日の目標量を男性19グラム以上、女性17グラム以上と定め、1日に350グラム以上の野菜を取ることを目標にしている。腸の動きを活発にする働きもあるので、便秘気味の場合は多く含む食材を積極的に取りたい。玄米や分づき米も食物繊維が残るのでお勧めだ。
一方で肉はどこまで食べていいのか。諸説が入り交じっている状況だが、関連著書が多い胃腸科の松生恒夫医師は、「肉は週1回に減らし、脂のうまみを我慢できない人はコレステロール値を改善するオリーブオイルを使うパスタやサラダに置き換えてみては」と語る。また、「肉を食べるときは、その3倍の重さの野菜を包んだり、混ぜたりして一緒に取る。伝統的な和食のように小魚や青魚に変えるのもよい」(辨野さん)というアドバイスもある。