多くのセンサーを付けるポリグラフ検査(写真左)と、携帯型装置を使った検査=山梨大の杉山助教提供

小児患者の割合は海外で1~3%と報告されているが、「イビキは幼児期から小学校低学年の子どもに目立ち、その多くに睡眠時無呼吸が隠れている」と指摘する医師もいる。

日本学校保健会が07年に8都府県の小学校21校で保護者を対象に行った調査(1764人回答)では、子どもに睡眠時の無呼吸が「よくある」「時々ある」が1年生では4.5%、5年生、6年生でもそれぞれ3.4%、2.4%あった。

睡眠時無呼吸の子どもの4人に1人に「寝息が荒い」や「イビキをかく」などの症状がみられ、調査で中心となった工藤教授は「特にイビキをかく子どもで、落ち着きがなかったり学習意欲が低かったりする割合が高かった」と話す。ただ、「子どもの睡眠時無呼吸症候群は、小児科や耳鼻咽喉科の医師の間でも十分理解されていない」のが現状だ。

検査法が簡便に

診断のための検査が煩わしいことも影響している。国際標準となっている睡眠ポリグラフ検査は、体に20以上のセンサーを付けて、眠っている間の脳波や心電図、眼球運動、口・鼻の気流、血中の酸素濃度などを調べるもので、3~4歳の幼児に行うのは難しく、実施できる医療機関は限られている。このため、簡便で子どもへの負担が小さい検査法が求められてきた。

山梨大小児科の杉山剛助教は08年から、携帯型の検査装置「SAS2100」を使って、睡眠時の呼吸障害の程度を測り、独自に作成した問診票の結果と併せて、手術などの治療が必要な子どもを見つけ出す診断基準を編み出した。

検査は、鼻の下に装着した管で息の圧力を測り呼吸やイビキの状態を把握するとともに、指先に付けた小さな装置で心拍数や酸素濃度を計測し、それぞれデータをSAS2100に記録し解析する――という方法だ。

杉山助教は「小児の睡眠時無呼吸症候群は治療法が確立しており、これまでの検証では、治療を受けた子どもの大半でイビキなどの症状が改善、集中力や落ち着きを取り戻す傾向にあることが分かっている。にもかかわらず検査が障害となって、診断されずに適切な治療を受けないでいる潜在患者が多い」と強調。「心身の成長にとって大切な時期だけに適切な検査と治療の普及が重要だ」と話している。