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介護保険を活用、家族の負担を軽減 認知症を知る(下)

2011/8/21 日本経済新聞 朝刊

人口の高齢化に伴って増え続ける認知症。そうなった人たちをどう支えていけばよいのだろうか。家族が疲弊してしまわないためには何が必要なのだろうか。介護保険の活用は大きな柱。住民の意識を高め、地域で見守る姿勢も必要とされる。今回は介護保険のサービスや地域での取り組みを探る。

家庭的な雰囲気での介護は認知症の人にも適切(京都府長岡京市の特別養護老人ホーム「天神の杜」)

午前7時=起床。職員は歯みがきや着替えを手伝う。入れ歯の紛失に注意。

7時15分=トイレ。職員は手を引いて連れて行く。目が不自由なので一つ一つの動作を説明する。

7時30分=朝ご飯までゆっくりソファで過ごす。職員は足のむくみを確認、むくみがあれば足を上げる。

京都府長岡京市にある特別養護老人ホーム「天神の杜(もり)」で暮らす岩川仁作さん(86)の朝の様子だ。仁作さんは認知症が進み、糖尿病の影響で全盲に近い。介護保険では「要介護5」という最重度の認定。

同ホームは全室個室で10人程度の入居者を1つの生活単位(ユニット)とし、家庭的な雰囲気の中で個人のペースに合わせて介護する「ユニットケア」を導入している。入居者の生活を家族からも聞いて細かく調査し、冒頭のような24時間の生活情報シートを作成。入居者自身ができること、職員が介助することなどを記入し、これに基づき介護する。日々の変化も記録、必要に応じ修正していく。

これによって、職員間で正確な情報を共有できるようになり、いつでも家と同じような生活を目指す。「認知症の人にも優しいケアができる」(総施設長の五十棲恒夫さん)という。

仁作さんが認知症と診断を受けたのは10年近く前。妻の絢子さん(79)が自宅で介護を続けていたが、夜うろうろする仁作さんを見守るために眠れなくなり、絢子さん自身にも病気が見つかった。限界に近かった2年ほど前、申し込んでいた「天神の杜」に空きができ、入居した。

入居当初、仁作さんは夜起き出して妻を探していた。24時間シートを使い「絢子さんへの思いも大切にしながら」(職員の田中美智子さん)介護した結果、夜はゆっくり休むように。日中も穏やかになったという。絢子さんも「本当に助かっている」と話す。

不安解消が大切

認知症の人には症状が悪化する恐れがあるので、不安やストレスを与えてはいけないとされる。かつて特養ホームといえば、相部屋で大人数が一斉に食事、入浴などをこなす集団ケアが主流。家での暮らしとあまりに異なり、認知症の人には適していなかった。厚生労働省は、これからの特養ホームは原則、個室を備えたユニットケア方式とするよう指導している。

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