初心者にお勧めの宿坊
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座禅や写経など体験型が人気
寺や神社に泊まれる「宿坊」が関心を集めている。朝のお勤めや座禅など通常の宿ではできない体験ができ、精進料理も食べられる。初心者でもなじみやすいおすすめの宿坊を専門家に選んでもらった。
宿泊が可能な寺社は全国各地に現在、300近くあるもよう。古くから参詣が盛んな和歌山県の高野山や長野県の善光寺などは宿坊の集中エリア。修験道で知られる山形県の出羽三山や東京都の御岳山などにも多い。各宗派の寺が集まる京都の宿坊も多彩だ。
そんな中で1位に選ばれたのは埼玉県秩父市の大陽寺。都心から近いにもかかわらず深い山中にあり、座禅などの体験メニューがそろう点が評価された。
大陽寺をはじめランキングの上位には禅宗寺院が多く挙がり、それぞれ座禅を体験できる。座禅は禅宗ではない寺にはないことが多く要注意。3位の高野山・一乗院は真言宗の宿坊で、座禅ではないが「阿字観」という瞑想(めいそう)を体験できる。
専門家が勧めるのは朝のお勤めへの参加だ。お勤めは早朝、本尊の前でする読経で、参加自由の宿坊が多いが、「お堂に響く僧侶の声を聞くとすがすがしい気持ちになる」(堀内克彦さん)という。
宿の楽しみの一つである食事は、ほとんどが精進料理。宗派などの違いによりバリエーションは意外に豊富だ。善光寺、高野山の宿坊は総じて精進料理の評価が高い。また「禅宗では僧侶が、ほかの宗派では奥さんらが作ることが多い」(吉田さらささん)などの違いを知っておくのも良いだろう。ただし、神社の宿坊では精進料理を出さない。
宿泊時の注意点は客室の備品。浴衣や歯ブラシなど最低限の備品しかないことが多く、バスタオルや寝間着は持参する必要がある。また、食事時の飲酒は大半の宿坊で可能だが、宗教施設のため、羽目を外した振る舞いは控えたい。
「伝統」「近代的」…多彩な京都
選から漏れた宿坊を推す声も。例えば京都では吉田さらささんが「最近建て直して設備が改善」と知恩院の和順会館を推薦。仁和寺御室会館も観光至便で朝のお勤めが充実しているという。「古く趣ある宿坊と近代的で快適な施設。どちらも選べるのが京都」
九州では大分県の文殊仙寺が支持を集めた。「今年は12年に一度の本尊ご開帳も」と宮沢やすみさん。山形県鶴岡市の出羽三山神社斎館・羽黒山参籠所は畑中章宏さん推薦。「地元産山菜の料理が美味」。佐伯史麿さんが推す奈良・吉野山の竹林院は露天風呂付き客室もあり、高級旅館のよう。変わり種は高梨利彦さん一押し、長野県安曇野市の金剛寺。韓国太古宗の日本総本山で、韓国風精進料理を出す。
調査の方法 一般宿泊客を受け入れている宿坊から、専門家の助言などを踏まえて全国39カ所を候補に選定。初心者にも利用しやすい施設を専門家におすすめとして挙げてもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
井門隆夫(井門観光研究所)▽佐伯史麿(雄山神社権禰宜)▽坂原弘康(神社仏閣ライター)▽高梨利彦(石水ツアーズ)▽畑中章宏(著述家)▽小林千絵(クラブツーリズム「こころの旅・寺旅」担当)▽福本正幸(NPO法人心遍路理事長)▽堀内克彦(宿坊研究会代表)▽宮沢やすみ(仏像コラムニスト)▽吉田さらさ(寺と神社の旅研究家)▽湧井悦子(宿坊研究会)
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