救急医療、IT活用進化 救命率の向上に

救急医療に、より高度なIT(情報技術)を活用する取り組みが各地で進んでいる。脳卒中や心筋梗塞、重い外傷など、救急医療は時間との勝負だ。患者の情報を早く正確に把握して適切な搬送病院を選択、搬送先の医師が高精度の情報を基に救急隊員に処置を指示するとともに、患者到着前に治療の準備に取りかかる――。救命率の向上を目指し、救急現場と病院をつなぐシステムの開発が実用段階に差し掛かっている。

天井に設置されたカメラで、リアルタイムに患者の様子を病院に送る救急車(大阪府吹田市)

救急車が交通事故の現場に到着すると、隊員が負傷者に駆け寄った。血圧や脈拍などを測り、ビデオカメラで傷口や表情などを撮影。データや映像は大阪府済生会千里救命救急センターに送られる。「かなり重傷だ」。センターの医師たちは、間もなく運び込まれる患者の検査や治療の準備に取りかかった。

「死亡症例ゼロ」

大阪府吹田市の消防本部が導入した「モバイル・テレメディシン・システム」。2008年に脳卒中や心疾患を専門とする国立循環器病研究センター(同市)との間で運用を始め、10年からは、重度の外傷を扱う千里救命救急センター(同市)にも対象を広げた。

病院に送るのは心電図の波形画像のほか、血圧、脈拍、血中酸素飽和度などの生体データ。08年6月~11年5月末の間に229例で使用。「死亡症例はまだゼロで、救命率向上に寄与している」(前部晴奈消防司令)。千里救命救急センターの林靖之副センター長は「普段の診察でも、患者情報の8割は目で見て得ている。患者の様子を見られる意義は大きい」と話す。

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