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東北の海の幸が“道端”に 秋吉久美子さん 食の履歴書

2011/7/1 日本経済新聞 プラスワン

上京後はジャンクフード漬けの時期も=写真 塩山賢 (あきよし・くみこ)1954年静岡県生まれ。74年映画「赤ちょうちん」「妹」「バージンブルース」の青春3部作で脚光を浴びる。95年「深い河」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞。2009年早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。

水平線が春の日を浴びてキラキラと光っている。桜が咲き誇る4月半ば。小学校から高校までを過ごした故郷、福島県いわき市の海辺に立っていた。「海は昔と変わらずこんなに美しいのに……。涙がにじんで仕方がなかった。とても切ないですね」。そうつぶやいて唇をかんだ。

東日本大震災――。未曽有の悲劇に見舞われた故郷では今も多くの被災者が不自由な避難所生活を強いられている。「そんな時だからこそ、色と香りを届けたかった」。ボランティアで地元の高校の入学式に出席し、ピンクのバラを1輪ずつ生徒に贈ったという。

海産物に恵まれたいわき市の自宅の前はかなりのデコボコ道だった。漁港に出入りするトラックが、うまい具合に新鮮な魚を荷台から落としていく。「冗談みたいだけど、母がバケツを抱えて、その日のおかずを拾ってくることもあったんですよ」と苦笑する。

忘れられないのが母の手料理。バフンウニを山盛りにしてよく貝焼きにした。マンボウやサンマ、サバは刺し身で食べた。メヒカリのから揚げは頭からカリカリと食べた。絶品だったのが赤魚の煮付け。熱々のだし汁に骨の回りのゼラチン質がトロリと溶け出して、深みのある磯の香りが口いっぱいに広がった。

父が水産試験場に勤めていたため、漁師からも様々な魚が届けられた。「函館の海で育った父は、静岡の山で育った母の魚料理に何度もダメ出ししながら厳しく鍛えていました。だから母の魚料理は玄人はだし。今から考えると、すごくぜいたくな食生活でしたね」。そんな四季折々の海の幸を味わいながら育った。

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