SUPER8/スーパーエイト
映画少年のSFファンタジー
1979年夏。映画少年たちが夜の無人駅で撮影中に軍用列車の事故に遭遇、その様子を彼らの8ミリカメラが偶然記録していた。
登場する子供たちと同じ映画小僧だった「スター・トレック」の監督、J・J・エイブラムスが脚本を書いて監督。スティーブン・スピルバーグが製作して彼の「E.T.」に通じるSFファンタジーが生れた。
母が事故死を遂げて4ヶ月。保安官の父と二人暮らしのジョー(ジョエル・コートニー)と、彼の映画仲間はヒロイン役に少女アリス(エル・ファニング)を引き入れ、チャールズ(ライリー・グリフィス)の監督でカメラが廻(まわ)った。その背後を通過した軍用列車に車が激突して大惨事、直後から町は軍の監視下に置かれ、人や犬が姿を消した。
息子を構う余裕のない父と、妻の家出以来、酒に溺れるアリスの父。79年といえば、米国では妻の自立や離婚がふえ、家族の形態が変わり始めた時代の象徴のような映画「クレイマー、クレイマー」が生れた年。
そんな時代の雰囲気を再現しながら、ここには謎の物体を相手にしたとき、やさしく接すれば相手もやさしくなるはず、というメッセージがある。故郷へ帰りたいこの物体に、天国にいる母の許(もと)に届くことを願い、幼い日の彼を抱く母の写真入りのペンダントを持ち帰らせようとするジョーの気持ちがいじらしい。
スピルバーグの「未知との遭遇」(77年)、「E.T.」(82年)にある地球外生物との出会いに似たやさしさを感じさせながら、その一方で、子供たちの撮った映画がグロテスクな"ゾンビ"物なのが笑える。映画小僧はやさしいけど悪趣味!
エル・ファニングや、彼女にゾンビ化粧を施す特殊メイク担当のジョーの不器用な手つきが凄(すご)く可愛(かわい)いので★ひとつおまけ。1時間52分。
★★★★
(映画評論家 渡辺 祥子)
[日本経済新聞夕刊2011年6月24日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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