大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇旅先の騒動 面白おかしく

劇団「五反田団」を主宰する前田司郎の小説の映画化。脚本も彼自身が手がけている。長い同棲生活の末に結婚した夫婦が地獄ツアーという新婚旅行に出かける。その地獄の旅先で2人が繰り広げるテンヤワンヤの騒動を、面白おかしく描き出すギャグ満載のコメディーである。

主演の竹野内豊(右から2人目)と水川あさみ(右) (C)2010「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」製作委員会

新婚ホヤホヤの大木信義(竹野内豊)と咲(水川あさみ)は、同棲が長かったためすでに倦怠(けんたい)気味。引っ越してきたばかりの新居で炊飯ジャーをめぐって喧嘩(けんか)する始末。そんな中、スーパーに買い物に行った咲が胡散臭(うさんくさ)い占い師から地獄ツアーに誘われ、面白がる信義と一緒に一泊二日の新婚旅行に出かける。

地獄の入口は何と屋上に置かれたバスタブ。信義が汚い水に手を入れるとバスタブに吸い込まれ、咲も後を追う。まるでジャン・コクトーの「詩人の血」の鏡のように、実にアナログなところがいい。そんな素朴だが想像力豊かなアイディアと仕掛けが全篇にちりばめられ、独特な趣きを出している。

地獄に落ちた2人は、ギリシャ神話のオルフェウスのように後ろを振り向いてはならないという掟(おきて)を破って地獄をさまよう破目に。得体の知れぬ「赤い人」に追われて「青い人」に助けられたり、ようやく辿り着いたホテルでビーフシチュー温泉に浸かったりと、2人は奇想天外な地獄の旅を繰り広げる……。

地獄というと何やら恐ろしげで不気味な世界を思い浮かべるが、本田隆一監督は、ナンセンスでシュールな味わいをコミカルに出すと同時に、ラストで「青い人」の少女たちとの情愛豊かな交流に見られるように心温まる雰囲気を醸し出している。主演の竹野内と水川のやりとりも、ボケとツッコミの芸人に似た惚(とぼ)けた味を出していて面白い。2時間1分。

★★★★

(映画評論家 村山 匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2011年5月20日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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