ジャズ、地域おこしの役割担う震災と音楽、渡辺貞夫さんに聞く

東日本大震災の後、多くの音楽家が被災地支援のメッセージを発し、自分たちに何ができるかを自問している。渡辺貞夫さん(78)はその一人。もどかしさを感じながら、未来へ歩む思いを新曲に込めたという世界的なサックス奏者に聞いた。

大震災の当日、都内の自宅にいた渡辺さん。3月末から予定していた東北各県を訪ねるライブツアーは中止を余儀なくされた。どんな音楽家も大災害には一人の人間として向き合わざるを得ない。震災直後、無力感に襲われたが、音楽の役割を自分自身で問い直し、純粋に音と向き合うことで少しずつ明かりが見えてきた。

「すぐ現地に飛んでいってお手伝いができるわけではない。テレビで毎日、被災地の様子を見ながら、『どうしたらいいんだろう』と考えていた。何をしても集中できず、焦点が合わないような気持ちになっていた。それが、ピアノに向かって曲を作ると少し落ち着けた」

出来上がったのは3つの新曲。タイトルにメッセージが込められている。「What I Should」には自分は何をすべきか、という自問。「Warm Days Ahead」と、「芽吹き」を意味する「Gemmation」には未来への希望を託した。いずれも根底には「共に歩んでいこう」という思いがある。「次に出すアルバムのタイトルも曲順ももう決まった。こんなに早く決まったことは今までなかった」。震災を機に音楽との向き合い方に大きな変化が生まれつつあるようだ。

「4月に西日本から東京までツアーで回り、新曲も披露した。僕は普通、ステージでの演奏中、ほとんどしゃべりを挟まない。だけど今回は特別だった。お客さんに、震災以来、僕が感じていた何もできないもどかしさ、そして、新曲に込めた思いを打ち明けた。お客さんも僕の胸の内をくみ取ってくれたのではないか」

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