ウイルスも活用

抗がん剤以外の試みもある。岡山大学は遺伝子治療の臨床研究を準備中だ。「REIC」という遺伝子をがん細胞に送り込み、がんだけを自滅させるとともに、免疫力を活性化させる。マウス実験では腫瘍が消えたり縮小したりした。豊岡伸一助教は「患者の期待は大きい。学内や国の承認を得たうえで今秋にもスタートさせたい」と話す。

東京大学の森本幾夫教授らは、中皮腫のがん細胞の表面にあるたんぱく質「CD26」の働きを抑える抗体を使った治療の実現を目指す。キッセイ薬品工業などと協力し、フランスで安全性や効果を調べる臨床試験を実施している。結果がわかり次第、国内でも臨床試験を始める方針。

大阪府立成人病センターの高橋克仁部長と山村倫子研究員らは、たんぱく質「カルポニン」を持ち増殖するがん細胞を壊すウイルスを治療に使う研究を進める。カルポニンは中皮腫患者の約3割で見つかり、肉腫型に多い。11年度中に英国でウイルスを製造する計画で、2年後にも国内で臨床研究を始めたいという。

ただ、すべての中皮腫に効く治療法開発は難しそう。独自の遺伝子治療法を研究する医薬基盤研究所の仲哲治研究部長は「患者のタイプごとに最も効果的な治療法の選択や、最適な組み合わせを探る必要がある」と強調する。

中皮腫発見に役立つ血液検査キットも、今年から本格的に使えるようになりそうだ。中皮腫のがん細胞から分泌される「メソテリン関連たんぱく質」を調べる。昨秋に国の製造承認が得られ、保険適用を目指している段階だ。

中皮腫は診断・治療とも簡単ではない。「石綿を吸い込んだ経験のある人は、労災病院や大学病院などで早めに診断を受けてほしい」と専門家は口をそろえる。

(長谷川章)

[日本経済新聞夕刊2011年3月4日付]

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