3つの手法の組み合わせは欧米で試験的に始まった。国内ではまだ十分なデータがそろっていないため、兵庫医大など全国17施設が協力し、安全性や有効性を確かめる臨床試験を実施中。中野教授は「この治療法で3年以上再発しない人もいる」と話す。ただ、手術対象になるのは、早期がんで比較的体力のある70歳以下が原則。患者の約1割にとどまる。

手術が難しい場合は抗がん剤治療になる。ペメトレキセド(商品名、アリムタ)とシスプラチンの併用が基本だ。シスプラチン単独より生存期間を3カ月延ばすことが欧米のデータで分かり、4年前に国内でもアリムタが承認された。2剤併用が有効なのは、中皮腫のうち「上皮型」で「肉腫型」にはあまり効かない。効果がなくなったら別の抗がん剤に切り替えるが、効果に限界がある。

このため新薬の開発が進む。国内外で臨床試験の最終段階にあるのが飲み薬のボリノスタット。がん増殖にかかわる酵素の働きを妨げる。試験に加わった岸本副院長は「2剤併用で効果のない患者にも効いた例があると考えられる」と話す。