静岡・由比 広重の富士山求めて

東海道五十三次の16番目の宿場町が静岡市・由比だ。17番の興津宿に向かう途中にあるのが薩●(つちへんに垂、さった)峠。駿河湾越しに見る富士山は、歌川広重の浮世絵にも描かれ富士見の絶好ポイントとして知られる。ふもとには幕末に山岡鉄舟が逃げ込んだ茶亭もある。歴史と眺望の一石二鳥を求めて旅に出た。

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眼下に駿河湾。晴れていれば正面に富士山が見えたはずだが…

JR由比駅からまず向かったのは、由比宿本陣跡に立つ東海道広重美術館。3月6日まで広重の薩●峠の絵(保永堂版)が飾られている。切り立った峠を越える旅人と真っ青な海、その向こうに雪を頂く富士山。素晴らしい色調だ。この景色がどうなっているのか、期待が膨らむ。

ボランティアガイドの望月一成さんによれば、由比宿は五十三次で2番目に小さい宿場町。600メートルに本陣、脇本陣、32軒の旅籠(はたご)と181軒の民家が並んでいた。たたずまいは変わったが、旧東海道は昔通りだ。

本陣を出ると目の前に正雪紺屋(こうや)がある。1651年、幕府転覆を企てた慶安の乱の首謀者、由比正雪の生家と伝わる。400年の歴史を誇る染物屋で、土間には古い藍がめが並び、火事の時に貴重品を運び出す用心かごが天井から下がる。

宿場の出入り口はかぎの手に曲がり、かつてここに木戸が設けられていた。飛脚業務や人馬の世話をした問屋場跡などが当時のにぎわいを伝える。

由比川のたもとで望月さんと別れ薩●峠を目指す。名物桜エビや黒はんぺんの看板が目立つ。向こうから次々と中高年のグループが歩いてきた。興津で観光バスを降り薩●峠を越えて由比宿まで歩くツアーだという。由比駅前を通り歩道橋を過ぎたあたりから再び両側に家が立ち並ぶ。左手に海、右手に山。幅3メートルほどの道を歩いているとかつての旅人気分になる。名主の館小池邸で一息いれ、間(あい)の宿倉沢を通る。

峠の登り口にある望嶽亭藤屋に着いた。敷地はかつての6分の1になったが、室町時代にはすでに茶店として知られ、富士を見ながら食べるサザエ、アワビは旅人のあこがれだった。広重の隷書版五十三次には藤屋のにぎわいが描かれている。