2011/3/4

耳寄りな話題

関東で「たぬき」といえば天かすが乗ったものだが、京都ではきつねうどんのあんかけを指す。19歳で上京して以来、東京暮らし。関西弁もほとんど消えた。それでも、「甘い揚げととろみのついたダシがきいたたぬきうどんと、吉本新喜劇だけは忘れたことがない」という。

そんなたぬきうどんは、人生の節目にしばしば登場する。「たぬきうどんに命を救われた」というエピソードもある。高校生のとき、東京に遊びに行った帰りのことだ。新幹線の中で、盲腸が破裂した。入院生活を送ったとき、毎日のように母親がたぬきうどんを取り寄せて届けてくれた。「たぬきうどんを食べなかったら元気になれなかったかも」と話す。

思春期に影響を受け、ギターに明け暮れるきっかけとなったあこがれのミュージシャン、ボブ・ディランに感謝されたこともある。1994年ディランが来日した際、コネを生かし、息子のサミエルを京都案内した。趣味の仏像鑑賞が生きた。帰りにたぬきうどんをおごると、後日、ディラン本人から直接「サンキュー」と声をかけてもらったという。「エビでタイを釣る」ならぬ、「たぬきうどんでディランを釣る」。世界でもおそらく、みうらだけの経験だ。

今でも京都に行けば必ずたぬきうどんを食べる。友人らを引き連れ、気の合う仲間と食べるたぬきうどんは大きなエネルギー源。「好きな人とだけ、好きなものを食べられる。大人になってよかったと心底思います」と笑う。

イラストや音楽、エッセーなどを生み出す一方、数多くの言葉も世に送り出してきた。97年に新語・流行語大賞に入賞した「マイブーム」もその一つ。その後、取材が殺到したが記者から聞かれることは「もちろん今のマイブームは?」。うんざりして答えると、「それはもうほかで見たので、別のものを」と言われる。「仕方ないからとっさに『てんぐ』と答えて、後から好きになることもあった」と振り返る。

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