悪魔を見た
すさまじい暴力描写
「グッド・バッド・ウィアード」(2008年)等の美男イ・ビョンホンと、「オールド・ボーイ」(03年)等の演技派チェ・ミンシク。
2大スターが、激烈な死闘をくりかえす、復讐(ふくしゅう)とバイオレンスの韓国映画の大作である。
監督は、西部劇的アクションをきわめた「グッド・バッド・ウィアード」のキム・ジウン。今回は、血みどろの残虐な見せ場をつぎつぎにくり出し、おどろかせる。この手の描写が、にがてな人には、おすすめしない。しかし、たがいに憎悪をつのらせ「鬼」と化していく2大スターの感情の膨張をえがくには、このくらいの暴力描写の強度が必要とも感じられ、その強烈さが、むしろ2人の対決の悲劇性をつよめている。
チェ・ミンシクが演じるのは、女性を犯しては殺し、死体を切りきざむ殺人鬼ギョンチョル。
ある雪の夜、いなか道で車が故障し、立ち往生していた女性をおそい、自分の作業場で殺す。河原にバラバラ死体を捨てた。
その女性が、おそわれる直前まで電話で話していた婚約者スヒョンが、イ・ビョンホン。国家情報院の捜査官だ。殺された婚約者の父である元刑事の協力をえて、ギョンチョルが犯人と確信したスヒョンは、警察には知らせず、一人で復讐を開始する。
スヒョンは、何度にもわたって、じわじわと敵を痛めつけ、なぶっていこうとする。気絶させたギョンチョルに、GPSチップとマイクのはいったカプセルをのみこませ、行動をつつぬけにした。そして、彼が新たな犯行をおこそうとすると阻止し、そのたびに、アキレス腱(けん)を切断するなどの痛手をあたえていく。
だが、ギョンチョルは、悪魔のようなタフさと狡智(こうち)さで、反攻に出るのだ。
なんともすさまじい2時間24分。
★★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2011年2月25日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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