愛する人
3人の女の人生見つめる
「彼女を見ればわかること」(1999年)、「美しい人」(2005年)等のロドリゴ・ガルシア監督の新作。脚本も監督自身による。
ロサンゼルスを舞台に、3人の女のドラマが、並行してかたりすすめられる。そのうち2人は、「生物学的に」母と娘であるものの、人生では、出会ったことのない他人という関係。
カレン(アネット・ベニング)は、14歳のとき恋におち妊娠した。生まれた女の子は、母親に言われるままに、誕生と同時に手ばなした。養子縁組をおこなう機関のシスターにまかせ、その後は、一切知らない。37年後の現在、老いた母と二人ぐらしのカレンは、名前も知らない「娘」にむかって、手紙のような日記を毎日つづっている。結婚はしていない。他人に接するとき、ついトゲトゲしくなる自分に気づく。
その「娘」は、エリザベス(ナオミ・ワッツ)という名で、弁護士になっている。法律事務所をいくつも転職し、キャリアを向上させた。結婚はしていない。17歳のとき卵管結紮(けっさつ)の手術をして、妊娠しないようにした。職にも男にも、しばられたくない。自分でえらんだ浮草のような人生。だが、妊娠しないはずだったのに、新しい事務所の所長(サミュエル・L・ジャクソン)の子を身ごもってしまった。彼女は、見知らぬ「母」を意識しはじめる。
ルーシー(ケリー・ワシントン)は、結婚したが、こどもを産めないからだなので、養子をのぞみ、縁組機関に依頼する……。
同じひとつの養子縁組所を交差点にして、3人の女の人生が、最後にまじわる。数奇なストーリーだが、重点はその数奇なおもしろさよりも、それによってキラキラとした断面を見せてゆく女たちの人生を見つめることにある。俳優たちの演技が、すばらしい。2時間6分。
★★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2011年1月14日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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