ばかもの心打つ危難のりこえた愛

芥川賞作家、絲山秋子の同題の小説を、「プライド」(2009年)の金子修介監督で映画化。脚本も「プライド」の高橋美幸。

10年間にわたる、せつなくも奇妙な愛のものがたりである。

1999年、群馬県高崎市。19歳の秀成(成宮寛貴)は、親の家から地元の大学にかよう気楽な大学生。まだ酒ものまず、童貞だった。

8歳年上の女、額子(がくこ)(内田有紀)が、秀成に酒とセックスをおしえた。男っぽい性格と不良っぽさのある額子とのセックスに秀成はおぼれる。

額子の強烈なキャラクターが、内田有紀によってみごとに肉体化されている。くりかえされるセックス・シーンも十分にエロチックである。

額子は、突然、秀成をすてる。最悪のわかれかたを演出して。結婚するのだという。

わかいころの火遊びの相手にすぎなかったかに見えた額子。だが、彼女の不在は、意外にじわじわと効いて、秀成の人生を狂わしていく。

1年留年して、地元の電器量販店に就職するが、飲酒の量がふえていき、やがてアルコール依存症に。恋人(白石美帆)との関係はこわれ、会社はクビになる。

徐々に症状がすすみ、壊れていく秀成のすがたが、精緻にえがかれる。

なんとか立ちなおった秀成は、額子が離婚していたことを知る。事故で片腕をうしなったことも。

長い不在のあと、再び登場する内田有紀の変容ぶりが、衝撃的である。腕だけでなく、もう一つの変化があるのだが、その美しい威厳に、こころ打たれる。

10年たち、多くのものをうしなって、やっと、おたがいが、かけがえのない者どうしだったことを知る。危難をのりこえた愛の結末が、感動をよぶ。2時間。

★★★★

(映画評論家 宇田川 幸洋)

[日本経済新聞夕刊2010年12月24日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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