飛行機に乗ると耳の痛みや詰まった感じがすることがないだろうか。離着陸時の気圧の変化に伴う耳の不調を「航空性中耳炎」という。普通は自然に治るのだが、風邪をひきやすい秋冬は重症化することもある。帰省など飛行機を利用する機会の増える季節。快適なフライトのための心得と機内での対処法について専門家に聞いた。
「3日前に海外から帰ってから、まだ聞こえが悪いんです」。11月中旬、男性会社員(32)が東京都港区の山川耳鼻咽喉(いんこう)科医院を受診した。「典型的な航空性中耳炎」(山川卓也院長)と診断され、鼻炎薬を処方された。
この時期同医院には「毎日、同様の症状を訴える患者が来院する」(山川院長)。頻繁に飛行機を利用するビジネスパーソンだけでなく、レジャーの旅行という人も。機内で治そうと無理に鼻をつまんで力む「耳抜き」を繰り返し、耳から出血した例もある。
耳の痛みの原因は何か?日本航空(JAL)産業医の鴻信義医師が説明してくれた。航空性中耳炎は耳の健康に不安を持つ人がなるのではなく、パイロットや客室乗務員を含む誰でもなる可能性があるということ。特に、秋冬は増える。原因は耳よりむしろ鼻にあるという。
痛みの発生源である鼓膜の内側の空間は、耳管と呼ばれる細い管で鼻と通じている。普段は無意識のうちに耳管から新鮮な空気を取り入れ、外との気圧の差を調節しているが、風邪や鼻炎で耳管が詰まると空気が自由に行き来できなくなる。耳管が詰まった状態で急激な気圧の変化を受けると、均衡を保てなくなった鼓膜が引っ張られて充血したり、内側に浸出液がたまったりする。
通常は数時間たてば自然に不快感は消えるが、充血のひどい場合や、痛むまま乗り継ぎなどで搭乗を繰り返すと、激しい痛み、頭痛や耳鳴りなどに見舞われることがある。一晩たっても痛む場合は、耳鼻科を受診しよう。