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曲を楽しむなら このオペラ 何でもランキング なじみの旋律 感動の扉

2010/11/20 日本経済新聞 プラスワン

芸術の秋も終盤。オペラを鑑賞したいと思いながら何となく敬遠している人も多いだろう。だがドラマや映画などで聞いたことのあるオペラの名曲は少なくない。初心者がまずオペラの音楽に親しむなら何がおすすめか。演目と曲名を専門家に選んでもらった。

1
912ポイント
カルメン/ビゼー 
藤原歌劇団
 スペインで自由奔放に生きる女カルメンと、彼女に心を奪われ、仕事も婚約者も捨てて追いかける衛兵伍長ドン・ホセとの恋愛や葛藤を描いた悲劇。カルメンが男たちを挑発する『ハバネラ』、ホセがカルメンへの愛を歌う『花の歌』、ホセの恋敵となる闘牛士エスカミーリョが歌う『闘牛士の歌』など有名な曲が満載。
「『ハバネラ』は流浪の民の血を引き、男に妥協しないカルメンの特異な性格を表現している」(岸純信さん)。「『花の歌』は恋心をこれほど切々と表現しているテノールを知らない」(小畑恒夫さん)。
2
809ポイント
椿姫(ラ・トラヴィアータ)/ヴェルディ 

新国立劇場(三枝近志)
 19世紀、パリの裏社交界。知性的で美しい高級娼婦(しょうふ)ヴィオレッタと地方出身の純情な青年アルフレードとの悲恋を描いた。タイトルの「ラ・トラヴィアータ」はイタリア語で「道を踏み外した女」という意味。アルフレードが乾杯の音頭を歌い出す華やかな旋律の『乾杯の歌』、うたげの後、ヴィオレッタが歌う『ああ、そはかの人か』や『花から花へ』などが有名。
「『乾杯の歌』は豪華なパーティー会場での楽しい3拍子」(畑中良輔さん)。『ああ、そはかの人か』は「ヴィオレッタの揺れる女心が聞きどころ」(岡本稔さん)、「真実の愛の崇高さを歌い尽くしている」(関根礼子さん)。
3
734ポイント
トゥーランドット/プッチーニ 
マリインスキー歌劇場(V.Baranovsky)
 中国皇帝の娘トゥーランドットとの結婚は3つの謎解きが条件で失敗すれば死が待っていた。カラフは女奴隷リュウが止めるのも聞かず挑戦し成功。結婚を嫌がる娘にカラフは自分の名を当てれば命を差し出すと提案。娘はリュウを追及するがリュウは自害。心をうたれた娘はカラフと結ばれる。
『誰も寝てはならぬ』は「イタリア・オペラの声の悦楽が満喫できる名アリア」(國土潤一さん)、「高音域を得意とするテノール歌手が最後に放つ高音の一声で場面を大きく盛り上げ、客席の喝采をさらう」(岸さん)。
4
693ポイント
蝶々夫人/プッチーニ 
新国立劇場(三枝近志)
 長崎の芸者、蝶々さんと米国海軍士官ピンカートンとの結婚と破たんを描いた。ピンカートンが帰ると信じて蝶々夫人が歌う『ある晴れた日に』などが有名。「これぞプッチーニの泣き節」(中野京子さん)、「蝶々さんの名アリアが胸を打つ。このほか『お江戸日本橋』など日本の歌も随所に現れる」(畑中さん)。
5
511ポイント
フィガロの結婚/モーツァルト 
ウィーン国立歌劇場(長谷川清徳)
 貴族を庶民の代表フィガロが一泡吹かせるという筋書き。笑いに包まれた喜劇の代表作。「セビリアの理髪師」の続編にあたる。「『恋とはどんなものかしら』はこの演目のなかでも最高の名曲。恋へのあこがれと微妙なときめきを歌わせたら、天才モーツァルトの右に出る者はいない」(大木正純さん)。
6
470ポイント
魔笛/モーツァルト 
ベルリン国立歌劇場(長谷川清徳)
 王子タミーノが鳥刺しのパパゲーノとともに夜の女王の娘パミーナを救う。大人も子どもも楽しめるメルヘン風の物語。あらゆる音楽形式を総合したモーツァルトの傑作。「『夜の女王のアリア』は復讐(ふくしゅう)に燃える女王の怒りを超絶技巧で表現した聴かせどころの多いアリア」(吉村溪さん)。
7
425ポイント
セビリアの理髪師/ロッシーニ 
藤原歌劇団
 セビリアを舞台に町の何でも屋でもある理髪師フィガロの活躍で若い恋人たちが結ばれるまでを描いた喜劇。「フィガロの結婚」の前編。「生き生きした旋律が満載」(石戸谷結子さん)、「フィガロが歌う『私は町の何でも屋』は聴き手の心を沸き立たせる天才ロッシーニが本領発揮したバリトンの名曲」(吉村さん)。
8
402ポイント
ドン・ジョヴァンニ/モーツァルト 
ベルリン国立歌劇場(長谷川清徳)
 好色の貴族ドン・ジョヴァンニが地獄に落ちるまでを描いた。喜劇とも悲劇ともつかない独特のオペラで、二重唱『お手をどうぞ』などが有名。「誘惑はオペラの本質」(堀内修さん)、「甘い二重唱。女性だけでなく、誘惑のテクニックを知りたい男性にもおすすめ」(石戸谷さん)。
9
396ポイント
ラ・ボエーム/プッチーニ 
メトロポリタン・オペラ
 パリを舞台に詩人ロドルフォら若い芸術家たちの気ままな生活の哀歓を描いた。ロドルフォと恋に落ちる貧しいお針子のミミが自分の身の上を歌った『私の名はミミ』などが有名。「若き詩人と貧しいお針子が恋に落ちる瞬間の心の震えを見事に歌い上げた」(吉村さん)、「アンサンブルが素晴らしい」(関根さん)。
10
334ポイント
トスカ/プッチーニ 
フィレンツェ歌劇場
 脱獄した政治犯をかくまった青年画家カヴァラドッシと、その恋人トスカをめぐる悲劇。トスカへの愛をカヴァラドッシが切々と歌う『星は光りぬ』は「テノールの名曲中の名曲」(中野さん)。悲嘆に暮れたトスカが歌う『歌に生き、恋に生き』は「大判のハンカチが必携。仕事も恋も両方欲しいという女性におすすめ」(石戸谷さん)。

最も多くの支持を集めたのがビゼーの「カルメン」。12人の選者の全員が推した。「ハバネラ」「花の歌」「闘牛士の歌」などは曲名は知らなくても大抵の人が耳にしたことがある名アリア(独唱)。「前奏曲」の沸き立つようなリズムも有名。美しく親しみやすい音楽がちりばめられている。

2位「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」はすすり泣くような弦の前奏曲で始まり一転して華やかな「乾杯の歌」につながる展開が鮮やか。「ああ、そはかの人か」から続く「花から花へ」はソプラノの聞かせどころだ。3位「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」はトリノ冬季五輪で荒川静香選手が演技に使い、よく知られるようになった。作曲家ではプッチーニ、モーツァルトに人気が集まった。

実際に劇場に足を運んでみるのが理想だが、初心者の場合、筋書きを追いながら、音楽、舞台装置、衣装などを楽しむのは大変と感じる人もいるだろう。音楽だけならCDやDVDでも手軽に聴くことができる。まず歌を切り口に深遠なオペラの世界に足を踏み入れるのもいい。

曲だけを楽しむ演奏会も多い。来年1月15日に開かれる「あなたが選ぶオペラ名曲セレクション」(日経ホール=東京・大手町)では、日本オペラ振興会が12月15日までホームページで一般から好きな曲を募集し、ベスト10を発表する。

曲に親しんだら、演目を丸ごと楽しもう。来年2月に「椿姫」「トゥーランドット」、3月に「トスカ」、6月に「蝶々夫人」「ラ・ボエーム」、9月に「セビリアの理髪師」などの公演が予定されている。

日常忘れ別世界に

声楽家・劇画家 池田理代子さん

オペラの醍醐味(だいごみ)は日常を忘れて別世界を旅できること。歌と楽器、演劇、美術、衣装などが一体となった総合芸術がその魅力です。

ただ初心者には難しいと感じる人もいますから、まず歌や曲が美しくてなじみがあり、筋書きが分かりやすい作品から楽しむのがおすすめです。

「フィガロの結婚」や「蝶々夫人」は歌や曲が有名で公演でもリクエストが多いですね。個人的にはプッチーニの「トスカ」の「歌に生き、恋に生き」が思い出深く、大好きな作品です。

よくオペラは歌舞伎にたとえられますが、それは違います。歌舞伎には演者による歌がありませんから。オペラは豪華な音楽付きの人形劇ととらえ、気軽に楽しむのがいいと思います。


表の見方 演目名の下は作曲者。数字は選者の評価を点数化。写真下のカッコ内は撮影者。
調査の方法 アリアや楽曲などオペラで演奏される音楽全般が対象。専門家におすすめの曲目を挙げてもらい、演目ごとに集計してランキングした。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
池田理代子(声楽家・劇画家)▽石戸谷結子(音楽ジャーナリスト)▽大木正純(音楽評論家)▽岡本稔(同)▽小畑恒夫(同)▽岸純信(オペラ研究家)▽國土潤一(声楽家・音楽評論家)▽関根礼子(音楽評論家)▽中野京子(ドイツ文学者)▽畑中良輔(東京芸大名誉教授)▽堀内修(音楽評論家)▽吉村溪(同)

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