ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
復讐心秘めた女の数奇な半生
スウェーデン発の、話題の大長篇(へん)ミステリーの映画化。3部作の完結篇だ。
今年1月に封切られ、いまはDVDになっている「1」は、それだけで一応完結していた。
現在、同時に公開されている「2」と、この「3」は、2作でひとつづきだ。
そして、3作がつながると、小柄なからだに、はかり知れない復讐(ふくしゅう)のエネルギーを秘めた女主人公、リスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)の数奇な半生の秘密があきらかになる。
背にドラゴンのタトゥーを負い、異形ともいえる外見。こころに孤独の影濃くしかし、調査員としての能力は超優秀。いったい彼女は何者なのか。だれもが、このキャラクターに魅せられるだろう。
彼女は、12歳で精神科病院に入れられた。その理由が「2」で説明される。
すべては、彼女の父親に起因している。その存在は国家の機密に属する。その父を殺そうとしたため、12歳のリスベットは拘禁され虐待されたのだし、現在もある勢力によって、つねにねらわれている。
「2」の終わりで瀕死(ひんし)の重傷を負ったリスベットは、リハビリにはげむ。病院内も決して安全ではない。
「1」で愛の行為をかわしたこともある、雑誌「ミレニアム」の発行人ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)の献身的な支援もえて、彼女はついに法廷で、被告の立場から逆に、闇の勢力の真相をあばいていく。
出廷するときに完璧(かんぺき)なパンク・ファッションでキメていくのが、カッコいい。
女性虐待への抵抗、パソコンを武器とするたたかいと、現代的なはなしだが、かたりくちは、連続活劇、もっとさかのぼって19世紀の伝奇小説をも思わせるおもしろさ。リスベットは、21世紀のモンテ・クリスト伯といえるかも知れない。2時間28分。
★★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2010年10月1日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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