富士山、あえて1合目から登る5合目まで、歴史感じながら3時間半

青春18きっぷで車窓味わう

地図を見たら富士山を囲むように走る電車があった。水平方向に富士山を一周すると……。

JR全線の普通・快速列車が乗り放題になる「青春18きっぷ」(今夏の期間は9月10日まで)を利用。東京の新宿駅を起点に山手線、東海道線で静岡県の富士駅へ。身延線に乗り換え山梨県の甲府駅へ向かい、中央線で新宿に戻る。少々強引だが、富士山をぐるっと一周できる。

一周に8時間 多彩な姿堪能

最初は静岡県の沼津駅に降りた。近くの漁港から伊豆半島西部へ向けて旅客船が出ている。船上に立てばほぼ海抜0メートル。見上げれば3776メートルの壮大な富士山が体感できるはずだ。港を出て5分ほどたつと、富士山の稜線(りょうせん)が一望に。曇り空で山頂は見えなかったが、雄大なすそ野は壮観だ。

ご当地グルメも楽しんだ。沼津の「あじずし」、全国区の知名度の「富士宮やきそば」、ゆでキャベツが売りの富士吉田の「吉田うどん」……。身延駅から車で15分のところから出発するロープウエーで身延山に登り、空中から富士山に迫った。

富士山一周の列車旅は約350キロ。乗車時間は約8時間。南側の東海道線、西の身延線、北の中央線と、あらゆる角度から富士山を見た。「冨嶽三十六景」の葛飾北斎も、こんな心持ちだったのかと思える旅だった。

記者のつぶやき
4年ほど前、静岡へ転勤が決まり新居を探そうと不動産屋を訪れた。目の前にそびえ立つ富士の姿に見とれていると、「富士山ですか……。慣れてしまうとただの山ですよ」と担当者が言った。
住んでみるとその通りになった。山の姿は美しいが、いつも視界に入るため当たり前の存在に。そのうち見とれることもなくなった。東京住まいの今、久しぶりに富士山を間近にして、再び見とれてしまった。自然の奥深さも再発見。やっぱり「ただの山」ではなかった。
(林哲矢)

[日経プラスワン2010年8月7日付]