富士山、あえて1合目から登る5合目まで、歴史感じながら3時間半

進むごとに季節後戻り

緩やかな山道は続く。2合目までは40分ほど。ここには立派な社殿があり、ちょうど雨がぱらぱらと降り始めたので、中に入り雨宿りを兼ねて5分ほど休憩。再び歩き始めると、人けのない山の中で「キィー、キィー」というかすれた金属音が耳に入る。「トラツグミという鳥の鳴き声ですよ」と、中川さん。登山道にはクマやカモシカなどの足跡もあり、ニホンリスが顔を出す時もあるという。

富士山は標高によって植物分布が様変わりする特徴を持つ。ふもとはブナなどの広葉樹が目立ち、登るに連れて針葉樹が広がる。「季節は夏でも、高度が上がると春めいた植生が広がる。登山道は一歩進むごとに季節を後戻りできる楽しみがある」(中川さん)

3合目では廃虚になった茶屋があり、近づくと「見晴し茶屋」と書いた看板が残っていた。この日は雨と風のあいにくの天気だったが、晴れれば木立の合間から河口湖が見渡せるようだ。4合目あたりにも昔の休憩所の廃虚があった。

馬返しから記者の足で3時間半ほど。今回の「ゴール」とした富士スバルライン5合目にたどり着いた。

今回のルートは最後の30分だけ頂上への登山道と重なり、5合目から上を目指す登山者とすれ違う。その数は30分で88人。それまでの3時間ではたった6人。人が少ない分、緩やかな登山道は静かで、鳥のさえずりや木々がサワサワと風に揺れる音が心地よい。車や人が行き交う5合目周辺のにぎわいとは対照的だ。

5合目より上は登山期間が7月から8月末までと限られるが、「1~5合目は5月から10月末まで楽しめる」と中川さん。雄大な富士の懐の深さを少しだけ長く感じられるのもいい。

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