富士山、あえて1合目から登る5合目まで、歴史感じながら3時間半

日本の最高峰、標高3776メートルの富士山にかねて登ってみたかった記者(30)。ただ、5合目からの登山道は、この夏も行列をなす混雑ぶりと聞く。そこで考えた。雄大な富士山の醍醐味(だいごみ)は頂上を目指すことだけではあるまいと。あまり聞かない「1合目」から登る、富士山をぐるっと水平方向に一周する……。魅力のすそ野は広いはずだ。

富士山を歩いて1合目から登る方法はあるのか。主な登山道は山梨県側の富士吉田、静岡県側の富士宮、須走、御殿場ルートの4つだが、いずれも5合目からスタートし頂上を目指すのが定番だ。

もとは参詣道 緩やかな上り

1合目から登れるルートは一見なさそうだが、詳細な地図を広げて見ると、富士吉田ルートにふもとから5合目までを結ぶ登山道を見つけた。調べると、この経路は富士参詣の道として江戸時代を中心に利用され、古道が今もあるという。傾斜も緩やかそうだ。

スタート地点は富士急行線富士吉田駅から車で20分ほどの「馬返し」に決めた。辞書によると、馬返しとは「登山路で道が険しくなり、乗ってきた馬を下りて歩かねばならなくなる地点」。馬が主要な交通手段だった時代はもちろん、1964年に5合目まで車で直接向かえる有料道路「富士スバルライン」が開通するまで、多くの登山者がこの馬返しから登っていた。

午前7時半。標高1450メートルの馬返しを出発。エコガイドで自然写真家の中川雄三さんに案内役をお願いした。まず目に付いたのが石造りの鳥居。その先には禊所(みそぎじょ)と呼ばれた場所があり、昔の登山者はここでおはらいを受けたようだ。さらに10分ほど古道を歩くと「1合目」と書かれた標識が見えた。

「富士山の5合目」はよく聞くが「1合目」は新鮮。標高を確認すると1520メートル。標識の後ろには古びた木造の建物があり、看板に近づくと「鈴原天照大神社」と読める。だが、今は戸を閉ざしている。

ところで、何合目というのはどう決めたのか。そんな疑問もわく。実は「合目」の意味ははっきりとしないらしい。「神社などが存在し信仰の拠点となった場所」「足もとを照らすあんどんの油が切れる地点」などを合目と定めたという説がある。

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