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長崎・島原半島 火山の猛威 間近に 国内初の地質遺産へ

2010/7/16 日本経済新聞 夕刊

日本有数の活火山、雲仙岳がもたらす災厄と恵み。そのはざまで培われたのが長崎・島原半島の生活文化だ。この地は2009年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が支援する「世界ジオパーク(地質遺産)」として国内初の認定を受けた。自然活動がはぐくんだ地質学的に貴重な事物と、その上で営まれる人々の暮らし。ジオツーリズムを体験しようと半島を歩いた。

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50万年前からの地層が露出した龍石海岸(長崎県南島原市)

生コン工場の敷地にクルマをとめ、国道の切り通しに取り残されたがけを回り込む。と、幾重にも堆積(たいせき)した土の層に目を奪われる。島原市の中心部から約20キロ。「龍石(たついし)海岸」にそびえる地層の大壁だ。くっきりとしま模様を成すのは、雲仙火山がその始まりの時期からはき出した土砂や岩石。50万年前からの火山活動の噴出物が、手に触れられるほどの近さで露出している。

「何層あるか数えてみてください」。島原半島ジオパーク事務局(長崎県島原市)の専門職員、大野希一さん(40)に促され、岩石混じりの土や砂質の層を目で追う。「7層…ですか?」「これ、数えました?」と足元を示された。「島原半島が海面下だったころ堆積した“口之津(くちのつ)層群”です」

雲仙火山が最初に噴火したのは50万年前。爆発的な噴火で火口から遠く離れたこの場所まで軽石を含む噴出物が届いた。上の方の地層はその後、火山のすそ野が延びて覆ったものだ。「この層は土石流です」といった説明に、多くの犠牲者を出した19年前の噴火の報道で耳にした専門用語が現実味を帯びる。

島原半島は北海道の洞爺湖有珠山、新潟県の糸魚川と並んで09年8月、世界ジオパークに認定された。21カ国に66カ所(10年4月時点)あるジオパークは、遺産の「保護」に加え「活用」ぶりも評価対象とする。旅行者にとっては地球(ジオ)の多彩な活動が織りなす自然景観だけでなく、人々の生活や歴史・文化までが見どころとなる。

たとえば名産のそうめんもジオパークの視点でみれば単なる旅のグルメではない。1638年の島原の乱で荒れ果てた半島南部に小豆島や讃岐の人々が入植し、小麦栽培に適した畑、雲仙の湧水(ゆうすい)や有明海の塩などの地の利を生かして育てた「大地の産物」だからだ。

島原湾を左に眺めながらさらに南に向かい、半島南端の波打ち際で奇妙な岩場に立つ。黒々としたつや消しの岩肌。半島がまだ火山島だった430万年前、近くの海底火山から噴き出した溶岩が冷え固まった「早崎玄武岩」だ。火口はその後、北に移動しながらマグマを噴き、陸地を広げていく。ここが島原半島の“始まりの地”だ。図鑑で見たような、猿人が歩く太古の地球の想像図が浮かぶ。

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