嗅覚で購買意欲くすぐる 香る商品や店が増加

「最近、洗濯物で甘いニオイがする。何か秘密があるの」。小学生の伊野辺詩音の話に探偵の松田章司が反応した。「商品もそうだけど、香りを漂わせる店があるとも聞くな。少し前は無臭ばやりだったのに」。2人は街へ調査に出かけた。
制汗剤など香る商品が増えている(東京都大田区のパワードラッグセガミ大森店)

最初に2人が注目したのは、汗やニオイを抑える制汗剤だった。この5年、平均5%ずつ市場が伸びた。「人気は香るタイプ。自分の汗のニオイを気にする人が増え、手を伸ばすようです」と日用品メーカー、ライオンの大古勝朗さん(46)が教えてくれた。

洗濯に使う柔軟剤でも香り付きが人気だ。「マンションなどで部屋干しが増え、いっしょに心地良い香りを室内に広げたいと思う人が増えています」と花王の杉村牧子さん(26)。香りを強調するタイプは5年前にはほとんどなかった。昨年は全体の12%を占めるまでになったという。

日用品、食品などから出る香りの元は植物を搾ったり、化学的に造ったりしてできる香料。メーカーの高砂香料工業に足を運ぶと「強く香る、長く香りが残るタイプが最近は人気です」と教えてくれた。

カレーの香り流す

「香りの商品が増えているのは間違いなさそうだ」。うなずく章司の袖を詩音が引っ張った。「あそこのスーパーからカレーのおいしいニオイがするよ」

店内を見渡してもカレーを調理する人の姿はない。クンクンと鼻を頼りに探すとカレールウの売り場に置かれた機械から出ていた。機械を設置した江崎グリコによると「今年3月から香りを流し始めました。ない場合より、売り上げが1.5倍以上になります」

このアイデアを考えたのは販売支援の会社、プロモツール(東京・文京)だ。同社の井上賢一さん(65)は「月に200件ほどの問い合わせがあります。関心は高いですよ」と明かしてくれた。「女性や家族連れに来てもらうため、ゲームセンターではバラなどの香りを出しています」

「香りを使った演出は広がっています。今は数十億円規模の市場でしょうが、10倍にはなるでしょう」。ホテルや衣料品店などで香りを演出するアットアロマ(同・渋谷)の片岡郷さん(46)はこう予想する。同社の取引先であるシップスという衣料品店では女性カジュアル衣料などジャンル別に独自の香りを取り入れているという。

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