秋田・雄物川 ゆるりと清流カヌー河原で地場産グルメ

雄物(おもの)川は秋田県南部の米どころを、ゆるゆると流れ下り、日本海に注ぎ込む。古くから舟運で栄えた「母なる川」に近年、カヌー場という新しい顔が加わった。中流域の核は全国花火競技大会(大曲の花火)で名高い大仙市。初夏の清流にカヌーを浮かべ、パドルを漕(こ)いだ。

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円すい形の山容の神宮寺嶽を眺めながら静かにカヌーを進める

ヒスイのような深緑色の川だった。出発点は玉川の勝田橋。上流部には乳頭温泉郷や日本一の水深を持つ田沢湖がある。

参加者は8人。カヌー経験者はいない。ライフジャケットを着用し、河原で安全講習が始まった。講師役は特定非営利活動法人(NPO法人)秋田パドラーズの舩山仁理事長(61)。パドルの持ち方と漕ぎ方、カヌー内の座り位置がポイントだ。

カナディアンカヌー(長さ約4.5メートル、最大幅0.9メートル)は2人乗り。競技用カヤックと比べて安定性に優れている。「障害物があってアブナイと思っても、真ん中(カヌーの左右中心線)に座って頭を下げていれば安全」と舩山さん。講習の最後に要注意。「乗り降りでひっくり返る人が8割。慎重に、慎重に」

午前11時前、参加者が分乗した4艇が川面をよろけるように進み出した。ガイド役の4艇と合わせて計8艇。水深3メートルはあろうか。透明度に驚く。川底の石。その一つ一つの表情が見える。「空中に浮いているような感じ」と参加者。雲ひとつない青空。6月初旬、水に手を入れると、「ヒャッ」と冷たい。

パドルを「漕ぐ」という表現は少し違う。川の流れるままにカヌーが勝手に進んでいく感覚。「ここはかじ取りだけで十分です」と舩山さん。エンジンのないカヌーは音のない世界だ。――いや、耳を澄ませば、船首が水を切るサワサワという音が聞こえてくる。野鳥のさえずり、頬(ほお)をなでる風の音も。「都会の人に、空気が鼻に刺さると言われたりする。うれしいですね。川は大きな宝です」

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パドラーズは環境保全を目的として、2003年に発足。カヌー自然観察会やクリーンアップ作戦などを開催し、地元の人を中心に毎年2千人ほどが参加してきた。雄物川のせきが少ない景観や、緩やかな流れが、カヌーの国際組織から評価され、活動に勢いがついた。川には27カ所の船着き場が整備されている。

出発から1時間40分。秋田スギの山並みに囲まれ、新緑の神宮寺の河原で昼食となった。地元の食材を使った特選メニューを「雄物川C級グルメ」と命名し、昨年パドラーズが「カヌーとC級グルメの旅」を始めた。

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