吹き替え映画なぜ増加? 「超日本語吹替版」も登場

「洋画(外国映画)で日本語への吹き替え版が増えているそうだ」。事務所に神田のご隠居がやってきた。探偵の深津明日香は「字幕版が普通だと思っていたのに不思議」というと、近所の小学生、国本玄輝を連れて調査に出た。
今年は洋画が好調だ(東京・港区のシネコン前で)

2人はシネマコンプレックス(シネコン=複合映画館)大手、TOHOシネマズ(東京・千代田)を訪ねた。番組編成室長、木田直樹さん(39)が対応した。「同じ映画でも字幕版より吹き替え版を求める客が増えました。吹き替え版はかつて家族向けの作品が中心でしたが、最近は一般向けでも目立ってきました」

吹き替え版や字幕版を作り、映画館に引き渡すのが配給会社だ。今年の一般向け映画では、たとえばパラマウントピクチャーズジャパン(東京・港)が6月封切りのアクション「アイアンマン2」の2割、7月公開のスペクタクル「エアベンダー」の4割を吹き替え版で用意する計画だ。

パラマウントなど外資系の配給大手5社を合わせると、吹き替え版をつくった作品の公開数は2001年が7本で、09年には27本に達した。全配給に占める吹き替えのある映画の割合は12%から32%に上がった。 「吹き替え版にはよい点が多くあります」。吹き替え版を作るグロービジョン(東京・新宿)の吉田啓介さん(47)が割り込んだ。

内容の9割伝える

「吹き替えならばセリフの内容の9割を伝えられますが、字幕だとせいぜい3割です」。字幕をつける際には客が1秒で4文字を読めると考え、一度に映すのは最も多くて26文字を原則にしているためだという。

外資系配給大手の一つ、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(東京・港)の佐藤和志さん(45)が説明した。「以前は多くの人が外国のスターにあこがれ、その声も楽しみたいから字幕版を好んでみました」

「それがどうして変わってしまったの」。玄輝が不思議そうな顔をすると、佐藤さんが続けた。「最近の映画は場面の切り替わりが速くなり、字幕をじっくり読んでいるひまがなくなったのかもしれないね」

20世紀フォックス映画(日本支社は東京・港)の高橋仁さん(55)は「日本語のセリフを洋画に取り入れ、邦画と競う狙いもあります」と明かした。「外国ドラマの吹き替えDVDなどを通じ、客の字幕へのこだわりは弱まっています」

玄輝が口を開いた。「吹き替え作りにはお金がかかるってグロービジョンの人は言っていたよね」。明日香は首をかしげた。「約2時間の映画では声優が20人ほど必要で、少なくとも字幕の5倍の費用がかかるそうよ。声優を集めるのも大変なんじゃないかしら」

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