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渡辺克也オーボエ・リサイタル ドイツ仕込みの交響的な音色

2014/8/25

欧州で活躍するオーボエ奏者の渡辺克也が8月8日、東京でソロ公演を開いた。1991年に渡独し、11年間在籍したベルリン・ドイツ・オペラをはじめ主要な管弦楽団の首席奏者を歴任した。単音楽器のオーボエを交響的に鳴らすスケールの大きな演奏を聴いた。

渡辺克也オーボエ・リサイタル(8月8日、渋谷区文化総合センター大和田さくらホール)=撮影 写真部 遠藤宏

「ドイツのオーケストラは音量が大きい。日本のオーケストラよりもはるかに大きいはずだ」。8日、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールでの「渡辺克也オーボエ・リサイタル2014」。公演前の楽屋で渡辺はこう話し始めた。1966年生まれの渡辺は東京芸術大学を卒業後、新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。90年の日本管打楽器コンクール優勝後、ドイツに渡り、ルール地方の古豪ヴッパータール交響楽団、指揮者の大野和士が音楽監督を務めたカールスルーエ・バーデン州立歌劇場管弦楽団、そしてベルリン・ドイツ・オペラで首席奏者を歴任した。現在は隣国ルクセンブルクのソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルクの首席奏者として活躍している。

ドイツでの経験を通じて「自分の演奏は当然変化した」。特にベルリン・ドイツ・オペラでは当時の音楽監督クリスティアン・ティーレマンの指揮の下、ワーグナーの壮大なオペラを演奏した。「ティーレマンが指揮するとなぜかオーケストラの低音がよく鳴る。オーボエの音量も当然大きくなければいけない」と渡辺は振り返る。「自分のオーボエの器を大きくしていく必要がある」。オーボエはフルートやクラリネットなどと同じ笛の一種の木管楽器であり、1度に2つ以上の音を出せない単音楽器だ。しかも音色は木管楽器の中でも鮮明で鋭く、音色の幅は狭い。「器を大きくする」という意味は公演で明かされる。

オーボエの渡辺克也(右)とピアノの小林有沙(左) (8月8日、渋谷区文化総合センター大和田さくらホール)=撮影 写真部 遠藤宏

ピアノでの共演は2012年モロッコ王妃国際ピアノコンクール優勝者の小林有沙。彼女の劇的なピアノの前奏に続いて渡辺の寂しげなオーボエの音色が響き渡る。フランスの作曲家エミール・パラディール(1844~1926年)の「演奏会用独奏曲」だ。渡辺のオーボエの伸びきった音には幅がある。単旋律でありながら、基音の周りに複数の音が同時に鳴り響いているのだ。「倍音」という振動音だろう。風の音や鳥の声にも含まれ、人間が古代から親しんできた自然のハーモニーといわれる。自然倍音を聞くと人は心が癒やされるという。どんな弦楽器や管楽器でも単音の周辺に倍音がかすかに鳴っている。しかしそれをどれだけ鳴り響かせることができるかは演奏家の力量によるようだ。

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