レナード・スラットキン指揮フランス国立リヨン管弦楽団来日公演フランス「幻想」を創るアメリカン

米国の世界的指揮者レナード・スラットキン率いるフランス国立リヨン管弦楽団が来日した。6月下旬から7月にかけて大野和士指揮フランス国立リヨン歌劇場、山田和樹指揮スイス・ロマンド管弦楽団と、フレンチ・アルプス近隣地方を本拠とする名門管弦楽団の来日が相次いだ。フランスとスイスにまたがる欧州の一地域からこれほど集中して管弦楽団が来るのは珍しい。指揮者はいずれもフランス人ではない。パリ流とは違うフランス音楽の魅力をスラットキンの指揮で聴いた。

フランス国立リヨン管弦楽団の音楽監督として来日した指揮者のレナード・スラットキン(7月17日、サントリーホール)=写真撮影 堀田 力丸

7月17日、サントリーホール(東京・港)での「レナード・スラットキン指揮フランス国立リヨン管弦楽団来日公演」。音楽監督を務めるスラットキンは1944年ロサンゼルス生まれ。米デトロイト交響楽団の音楽監督としても知られる。日本ではNHK交響楽団の客演指揮を重ねたことで有名だ。さらに国立リヨン管のコンサートマスター(バイオリン・スーパーソリスト)のジェニファー・ギルバートは日本人の母(桐朋学園出身のバイオリニスト建部洋子)を持つ米国人であり、ニューヨーク・フィルハーモニック音楽監督のアラン・ギルバートの妹だ。日本人の奏者も複数いる多国籍の管弦楽団だが、今回は日仏文化交流90周年でもあり、「リヨン市の文化大使」(スラットキン)として日本の8都市で9公演をこなした。

国立リヨン管とともにリヨン市の国際マーケティング組織「ONLYLYON(オンリーリヨン)」の幹部らも来日した。リヨンの国際的評価を高める目的で13の機関と企業が2007年に共同で設立した組織だ。17日午前には「オンリーリヨン」によるリヨン市を紹介する記者会見も開かれた。国立リヨン管の音楽監督に就任して3年のスラットキンは記者会見で「リヨンほど音楽作りをする上で理想的な都市はない。聴衆が若くてレベルが高いからだ。チケットが安いのも定期公演に若い人が多い理由だ」と語った。リヨンはフランスで特に文化にお金をかけている都市で、市の予算の20%が文化向けだという。スラットキンは「ベルリオーズやラロなどのフランス音楽の演奏を通じて日本とリヨンの橋渡しをしたい」と抱負を述べた。

さあ、どんなフランス音楽がスラットキンの指揮から紡ぎ出されるのか。と思いきや、1曲目は“アメリカン”だった。米国の誇る指揮者で作曲家のレナード・バーンスタイン(1918~90年)の「キャンディード序曲」だ。モダンでリズミカルな曲調が都会の喧噪(けんそう)や曲芸的なドタバタ騒ぎを思わせる。優美なメロディーが挟まって、ハリウッドの映画音楽みたいな雰囲気も出す。管弦楽の響きはみずみずしく、艶がある。「私はハリウッドで育ったが、美食の街リヨンは映画の都市でもある。映画つながりで私がリヨンにいるのは自然なことだ」とスラットキンは言う。アメリカ音楽が不思議と国立リヨン管の響きに合う。