ヒップホップに谷川俊太郎、大型新人 子どもコンサート多彩に

ヒップホップのダンサーがフランスのオーケストラとからみ、子どもたちも踊る。朗読付きの名曲に谷川俊太郎が新しい台本を書き下ろす。世界的音楽家夫妻の間に生まれた16歳の少女ピアニストが日本デビューする……。夏のオーケストラ公演の定番、子ども向けや親子向けのコンサートに今年、ちょっとゴージャスな異変が起きている。

フランス国立リヨン歌劇場のオーケストラが指導も兼ねる

テレビはもちろんミュージカルや映画、Jポップなど、幼児期から多種大量のエンターテインメントに囲まれて育った日本の子どもたちにクラシック音楽、オーケストラの素晴らしさを伝えようとしたら、並大抵の刺激では足りないとの危機意識が背景にはある。

東京のサントリーホールは地元の港区と組み、区内の小学4年生だけに限定した継続的な芸術体験プログラム「Enjoy! Music(エンジョイ! ミュージック)」を今夏に立ち上げた。世界的指揮者の大野和士が企画に加わり、初年度は大野が首席指揮者を務めるフランス国立リヨン歌劇場の来日公演をはさむ半年間、18校の約1千人が「音楽と身体表現」をテーマとするワークショップに参加する。大野が「低学年はまだ、理解が不足する。高学年だと照れが出る」といい、4年生だけを対象にした。

並川恭子の指導で大野和士指揮フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団の演奏に合わせ、座ったままの身体表現を一斉に試みる港区の小学4年生たち(写真提供=サントリーホール)

初年度は「マザーグース」を原作にしたフランスの作曲家ラベルの「マ・メール・ロワ」と、20世紀初頭のパリで一世を風靡したロシア・バレエ団に見いだされたロシアの作曲家ストラビンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」を課題曲に選んだ。まず5~7月に演出家で振付家の並川恭子が各校の音楽室を巡回し、課題曲から感じたイメージを自由に身体表現する特別授業を行った。6月26日には来日したリヨン歌劇場管の楽員と大野が南麻布の東町小学校の体育館に現れ、子どもたちは小規模の編成の生演奏に合わせた身体表現に挑んだ。7月2日はサントリーホールでフル編成のオーケストラを聴き、リヨンから同行したヒップホップダンサーの創作舞踊を鑑賞し、さらに並川と沢田リンジーの指導で着席したままの身体表現に興じた。

午前2時の開演寸前に客席へ入ると、ふだんのサントリーホールでは聴いたことのない「黄色い声」の阿鼻叫喚(あびきょうかん)に圧倒された。「みなさん、大野和士です」。定時に指揮者が現れ、すでに定評ある話術で客席を静め、小島奈津子アナウンサーの助けも借りながら「マ・メール・ロワ」の世界へと誘導する。フランスのオーケストラ特有の柔らかく透明な弦の音色、管の妙技はクラシック初心者の耳もたちまちとらえる。今の子どもたちの音楽を聴き分け、それを身体で表現する感度と能力は格段に上がっている。