「思い出のマーニー」で挑んだジブリらしさの先米林宏昌監督に聞く

米林宏昌(よねばやし・ひろまさ) 1973年、石川県野々市市生まれ。金沢美術工芸大学に在学中、CMなどでアニメーションを制作。96年スタジオジブリ入社。「千と千尋の神隠し」の原画担当などを経て、「借りぐらしのアリエッティ」(2010年)で監督デビューした。
「スタジオジブリらしさを外そうと思っても僕の中から自然とにじみ出てくる。だからこそジブリらしくないものを取り入れたいと思い、外部の人たちに参加してもらったんです」。新作長編アニメーション「思い出のマーニー」(19日公開)の米林宏昌監督はこう語る。高畑勲監督とともにジブリをけん引してきた宮崎駿監督が昨年、長編作品からの引退を決めた。そんな中、今後のジブリを担う一人であろう米林監督はどう新作に取り組んだのか。

――都会に暮らす心を閉ざした少女、杏奈が、療養先の海辺の村で謎めいた少女、マーニーと出会い、人生の新たな一歩を踏み出す。英児童文学を北海道に舞台を移して描いた作品だ。

「2年前、鈴木さん(鈴木敏夫プロデューサー)から原作を渡されて読んだ。面白く、感動的な話と思ったが、映像化するのは難しいと感じた。アンナ(原作でのヒロインの名前)の一人称語りや心の描写が魅力だが、それは動きで見せるアニメーションには向かない。『難し過ぎてできない』と一度断った。それでも『ぜひやってほしい』といわれ、イメージボード(作品の大まかなイメージを描いたスケッチ)を描いているうちに、『アンナを絵を描く少女にしたらどうか』と思いついた。そうすれば絵を通して彼女の心も表現できる。自分自身でも映像化したものを見たい、という気持ちになった」

――これまでのジブリ作品といえば、高畑、宮崎の両監督が強烈な個性とリーダーシップを原動力に作り上げるイメージがある。これに対して今回は、実写映画で活躍する種田陽平氏を美術監督、ジブリを離れた安藤雅司氏を作画監督に迎えるなど、外部の才能を積極的に取り入れた。

「前作の『借りぐらしのアリエッティ』で、美術や音、撮影などいろんなスタッフの力が合わさって1つの世界観ができたことを実感した。そこで今回も、今までとは違うメンバーの力を合わせれば新しい表現ができるのではないかと期待した」

「宮崎さんは物語を作ると同時に美術設定も考える、という超人的なやり方をしていた。だがそれはとても大変なこと。今回、種田さんには事前に大まかなイメージを伝え、僕が脚本とキャラクター設定を考えている間に、美術設定をしてもらった。例えば、マーニーが住む屋敷、杏奈がお世話になっている大岩家などの100分の1サイズの模型を作ってもらった。実写映画では模型を作るが、アニメーションではあまりない。ミニカメラを使って模型の屋敷をいろんな角度から見ることができ、よりイメージが明確になった。種田さんには小物や椅子、杏奈とマーニーが乗るボートなどのデザインもしてもらった。『こうきたか』という複雑なデザインもあり、種田さんとのやりとりは非常にエキサイティングだった」

「安藤さんは僕がジブリに入社した時、『もののけ姫』の作画監督をバリバリやっていた大先輩。今回の作品は映像化するのが難しい原作だったが、『安藤さんの力を借りれば難しい表現も可能になる』と直感した」