現代を映す西部劇 トミー・リー・ジョーンズの快作カンヌ映画祭リポート2014(5)

デザイナーのスキャンダラスな人生、赤裸々に描く「サンローラン」

ターナーやグレース・ケリーなど伝記映画が目立つ今年のカンヌだが、17日にコンペで公式上映された「サンローラン」はフランスを代表するファッションデザイナーの一人、イヴ・サンローラン(1936~2008年)のスキャンダラスな人生を赤裸々に描きだした。監督は「メゾン/ある娼館の記憶」のベルトラン・ボネロ。サンローラン役は「ハンニバル・ライジング」のギャスパー・ウリエルだ。

ベルトラン・ボネロ監督「サンローラン」

映画はサンローランの生涯のうち1967年から76年までの10年に焦点をあてる。タキシードのデザインを取り入れたスモーキングルックに続き、胸が透けて見えるシースルーや、アフリカの狩猟服にヒントを得たサファリルックなど画期的なコレクションを次々と発表するサンローラン。パリ五月革命を経て時代は急速に動いていく。サンローランは薬物への依存を強め、幻覚に苦しめられる。

公私にわたるパートナーであったイヴ・サンローラン社の元社長ピエール・ベルジェとの関係も生々しく描かれる。新しい恋人の出現やベルジェへの愛憎が強調され、性描写や薬物による幻覚の描写も執拗(しつよう)だ。そんな苦悩の中、ロシア風の意匠で大成功を収めた76年の秋冬コレクションを作り上げる場面がヤマ場だ。

フランスではジャリル・レスペール監督「イヴ・サンローラン」も1月に公開されるなど、サンローランの回顧ブーム。ベルジェは自著「イヴ・サンローランへの手紙」で「シャネルが女性に自由を与えたのであれば、君は女性に権力を与えた」と記す。ボネロ作品の終盤でもサンローランが心の中のシャネルに語りかける。

先達のシャネルがそうであったように、サンローランもまた20世紀という時代と共に語られる存在になった。

(カンヌ=編集委員 古賀重樹)

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