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音楽レビュー

2014/5/15

音楽レビュー

アコースティックギターの名手、アール・クルーはジャズバラードの名曲「ラウンド・ミッドナイト」で登場。さわりの8小節、さすがと思わせる味わい深いイントロを弾いたが、即興のソロは一切無し。他の曲でもこれといった出番がなかっただけに、せめて半コーラスでも、途中でソロをとらせたかった。

ディオンヌ・ワーウィックの歌伴奏では、小曽根と黒田のソロが光った

確かに、このときクルーは歌の伴奏に徹していた。主役はあくまでボーカルのロバータ・ガンバリーニだった。がむしゃらにソロをとっては、歌の雰囲気を壊しかねないので、はやる自意識を抑えるのもまた、プロらしさの証しといえる。

興が乗ればキレまくって、調性から外れたよじれのギターソロでファンを熱狂させるジョン・スコフィールドも、出番は多かったのに滞空時間が短い。

こうなると、もはや限られた持ち時間をどう料理するか、構成力の差が出る。手持ちの技術を持ち時間に出しきって詰め込もうとしたがるソリストは戦略負け。ディオンヌ・ワーウィックが歌ったおなじみのスタンダード「バイ・バイ・ブラックバード」では日本の若手、黒田卓也(トランペット)と小曽根真のソロが光った。小粋な夜逃げソングだけに、空間を機関銃のように音数で塗りつぶしてしまうより、音数は少なくても自分なりのストーリーを軽妙さ、洒脱(しゃだつ)さをまぶして語る方が曲想に合う。

デュオで演奏したハービー・ハンコック(左)とウェイン・ショーター

ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターがピアノとソプラノサックスのデュオでつづった美しい「メモリー・オブ・エンチャントメント」は、この日の収穫の一つ。2人とも“世界遺産級”の巨匠で、演奏は6、7分程度とさすがに比較的長めの時間が与えられた。テンポを決めず、たゆたうように緩急をつけながら展開する。不協和音を巧みにまぶし、関節を外すように調性を揺らめかせるハンコックの名人芸。その調性の波間を、透明感ある無邪気さで自在に泳ぐショーター。1960年代半ばに黄金クインテットと呼ばれ、マイルス・ディビスを支えた肝胆相照らす仲の2人だ。酸いも甘いもかみ分けた両人ならではの洗練された時間を作り出した。

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